いつか一度は行ってみたいと思っていたアンダマン諸島。とうとう足を踏み入れた。
「アンダマン」という名前は日本人にとってそれほど親しみのある音ではないと思う。が、私が長いこと潜っていたピピ島の海はアンダマン海のすみっこ。
今でこそ大量の観光客に踏みにじられてしまったピピ島の海は、私が初めて潜ったころ、どこを泳いでもリーフがキラキラと輝いていた。そしてそのピピ島よりもダイナミックかつ透明度も高いダイビングができたのがシミラン諸島・・・これはプーケットの北西にある。そしてシミラン諸島をさらに北上するとブルマバンク・・・ミャンマーの海域に入る。そしてそれをさらに北へ上るとアンダマン・ニコバル諸島だ。
以前は旅行者に解放された地域でなかったせいもあり、観光にしてもダイビングにしても未だ情報が少ない。
アンダマンという名前にはなじみが薄くても、ニコバルという地名なら知ってるという人は多いかもしれない。第二次大戦中日本軍が占領していたインド洋の諸島である。
このニコバル諸島とアンダマン諸島の一部は今でも入島に特別な許可が必要になる。インドという国に属しているにも関わらず、インド人さえ一般には入島を許可されていない。
さてはて、私にとって20年ぶりのインド。長いこと思い描いていたアンダマン諸島に入るということよりも「インドに入る」ということのほうが私の気を引き締める。
なんといってもバックパッカーの旅行自体が久しぶり。フィリピンをすでに1ヵ月うろついたとはいえ、純然たるマイペースのWolleと一緒に、一体インドでどうなることやら。
最悪、空港を降りた町で数日足踏み、という可能性もある。私の記憶では、移動のためのチケットを取るのにも相当なエネルギーが必要なはずだ…。
アンダマン諸島に行くには、まずインド本土に飛ばなくてはならない。ボンベイ、カルカッタ、と選択はいくつかあるうち、私たちはカルカッタ経由で飛ぶことにした。行き先はPort Blair。この空港、International
Airportと称しているが、実際はインド国内にしか出入りできない。
Port
Blairの空港で、インドに入国するときに入国スタンプを押してもらうのとは別個に、アンダマン諸島入島のスタンプを受ける。このスタンプを受けてから1ヵ月、私たちはアンダマン諸島に滞在できる。アンダマンビザだ。
インド入国のビザは自国でなり、インターネットを通してなり、あらかじめ取っておかなければならないけれど、このアンダマンビザは到着した人はその場で必ず取れる。料金もかからない。要は長期滞在者を増やさないためのビザかと思われる。
私たちの飛行機から降りた外国人は私たちを含めて4人。小さな飛行機とは言え、ほかの乗客はみんなインド人だ。
これは数日たってから気が付いたことだが、アンダマンはお金持ちのインド人のリゾート地らしい。
家族連れやカップルのインド人が何をするにも我先にと突進してくる。20年前の私の記憶と比べると随分と穏やかだし、リラックスしているけれど、それでもやっぱりインド人。あらかじめ席が決まっている飛行機でもボートでも、どうしたってできるだけ早く乗り込み、誰よりも先に外の空気に触れたいらしい。
ただ、最近インド本土を旅行してきたほかのバックパッカーに聞くと、アンダマンはインドではないらしい。20年も経ってあらゆるものが西洋化されつつあるとはいえ、インド本土を回るのは未だにちょっとばかしハードなようだ・・・コツをつかむまでは。
が、今回私たちはアンダマン諸島に焦点を当てている。「インドへ」と気張っていたけれど、思っていたよりもちょっぴりのんびりできそうだ。
Port
Blairでは1泊。ここは大きな町だとわかっていたので、できるだけ早くほかの島に移動することに決めていた。とは言え、この町で移動のチケットも取らなくてはいけないし、両替も済ませておいたほうがいい。
去年のインド通貨の混乱は治まってはいるものの、空港・銀行などの両替所ではいまだに一人1週間に70€しか両替できない。正直言って1週間70€というのは旅行者にとってちと無理な話でもあるのだけど、そこは両替商の出番。ただ、為替レートは非常に悪い。離島だから、足元を見られているわけではないのだけど、なんだかやっぱりちょっぴり悔しい。
しかーし。ボートのチケットはあっけないくらい簡単に取れた。インターネット上では数日後まで全チケット売り切れ、と出ていたものの、これは公共のフェリーの話らしく、ほかにもいくつかボートを運航している会社があるとのこと。リキシャの運転手にHavelock行きのボートチケットが買いたい旨を伝えると、はいよー、ってな勢いでオフィスに連れて行ってくれた。パスポートとビザを確認して、はい、っと翌日のチケットはすんなり手に入った。
なんだ、なんだ、これは。私が気合を入れていたのは何だったんだ。私の緊張を全く知らないWolleは当たり前のような顔をして翌日分のチケットをリュックサックにしまっている。なんだかひとり空回りだ。
Havelockはアンダマン諸島の中でも比較的リゾート地化されており、外国人、インド人問わず旅行者が多い町だ。飛行機を降りたPortBlairからフェリーで1時間半ほど。フェリーはチケットを買った時点でクラスも座席も決まっており、二人で3席占領、なんてことはできない代わりに満席だから床に座って1時間半、なんてこともない。
ところがこの町、私たちが想像をしていたよりもずっと発展しており、大きなリゾートもズドンズドンとビーチ沿いに乱立している。実際その手の大きなリゾートにはインド人ばかりが泊まり・・・地元の人曰く、彼らは1泊か長くて2泊ぐらいしか滞在しないらしい・・・外国人はできるだけ安いバンガローに泊まっている。
私たちが選んだのはほかの外国人旅行者と同じくビーチNo.5の安めのバンガロー。ビーチまで数10m、間にはヤシの木が並ぶ。
このHavelock。町の雰囲気や人の量はともかくとして、ビーチは「これほどに!」と嘆息するほどきれいだった。
最近、たいていのリゾート地では20年前くらいの写真を使って宣伝している地域が多く、行ってみてがっかりというのが大半。が、ここでは久しぶりにビーチに斜めに生えるヤシの木を見た。これ、何でもないようで現在実際にそういうヤシの木を見ることはまれ。
私たちはここで5日を過ごし、さらに情報の少ないNeil
Islandに向かう。
この島、名前すらアンダマンに入ってから初めて聞いた。地元の人たちと話しているときに2回ほど「Nei
Islandは静かでいいよ」と。
地元の人が言うからには、と期待しつつ・・・。