2017/05/24

今年の冬のダイビング その2 ~コロン・フィリピン~

フィリピン2か所目のダイビングはCoron。
この辺りでジュゴン見たいんだけどなぁ、なんて思いながら見かけるショップでちょっと話を聞く。ところがどこに行ってもジュゴンなんて言葉は一言も出てこない。
なんとCoronの見どころは第二次大戦の日本軍の沈船。・・・なんと、まぁ。

戦艦だけではなく、貨物船なども多い。

私が潜った日は1日3本のダイブ。1本目は沈船ではなく、これまた一つの見どころのBaracuda Lake(バラクーダレイク)。
Coronの町があるのはBusuanga Island(ブスアンガ島)の南東。この町の向かいにCoron Island(コロン島)という島がある。この島の西側にある湖で、水面から深度14mまでは淡水、そこから深度32mの水底までは海水、というちょっと毛色の変わった湖。
この湖には昔淡水なのにバラクーダ(オニカマス)が群れで住んでいたそうである。名前はそこから由来している。・・・が、すでに10年ほど前にはバラクーダは全くいなくなり、今では生き物自体がほとんどいない。
このダイブサイトのもう一つ面白いところ。水温。
淡水中は30℃弱という、島の周りの海と同じくらいの水温。それが14mを超えると、40℃まで水温が上がる。これは、水底から湧き出している海水のため。確かにCoronの観光地の一つに海水の温泉がある。塩分濃度も水温も高く、長いこと入ってはいられないけれど。

そんな水温なのでウェットスーツはなし。ボートがコロン島の浅瀬に着くと、ダイバーは各自自分の器材を背負って浅瀬から階段を20段くらい上がって、また降りる。すると湖のプラットフォームに降りられるようになっている。
ここはもちろんダイバー専用ではないのでノンダイバーでも泳ぎに行ける。
湖は岸壁に囲まれており、水底から何も生えていない絶壁がそそり立つ。


徐々に深度を下げていくと、突然もわぁっと気持ちの悪い水域に入る。これが水温40度。
お風呂や温泉で40度のお湯につかることはあっても、実際に頭のてっぺんまで40度の中に入ることはめったにない。あったとしてもすぐに頭を水面に突き出せる。が、ダイビング中深度14mで全身40℃に浸かるというのは、正直言って全くもって気持ちのいいものではなかった。

が、気持ち悪い、気持ち悪いとは思いながらも、しばらくその水温中にいれば徐々に慣れるもの。深度を下げていく。水底の一番深いところは32m。水底の堆積物は細かい泥なので徐々に透明度が落ちていく。そして、30mまで行くと、残りの2mは透明度0になる。自分の腕さえ見えない。そして、なんとその水の色は赤茶色。
ちなみにこれは私に常にくっついていたダイバー。
深度30m超で水温40度、透明度0というのは、正直言って もうちょっと細かい説明をしておいてほしかったなぁ、とも思う。一人のダイバーは、視界0の中に入っていく前に「ここで待ってる」というサインを出してストップしたほど。

とにかく変わったダイビング。良し悪しは別として。話のネタにはなる。
少なくとも私にとっては面白いダイブだった。


さて、2本目3本目。
たくさんある沈船の中から二つ。確か一つはオリンピア丸という沈船だったような気もするけど、ブリーフィングがあまりにも適当だったため、名前はよくわからない。覚えているのはどちらも沈船内で深度30mを超えていたということ。

私としては久しぶりの沈船にワクワク。ここのところもう何年も沈船に入っていないけれど、もともと沈船の内部に入るペネトレーションダイブが大好きだった。ただ、これはお客さんをむやみに連れていくことはできないので、インストラクター仲間で遊びに行くときに限られていた。

と、ここまで書けばわかると思うけれど、沈船内を泳ぐことは非常にリスクが高い。いくら上級ダイバーでも、レックスペシャリティダイバーでなければ沈船内に入ることはダイビング団体から禁じられている。
理由は簡単。何かあったときに水面に直浮上できないから。しかも、細かい泥がたまった沈船内をフィンを使ってパタパタと泳いだらたちまち視界が0になる。 視界0の中を迷路のような通路をたどって船外に出るなんてよっぽどでなければ無理な話だ。焦って空気を余計に吸う。パニックになる。余計に激しく動く。さらに空気を吸う。エア切れになるまで終わらない悪循環だ。そしてもちろんエア切れになったらさようなら、だ。

この日の沈船ダイブ。私たちのグループは4人。私ともう一人はインストラクター、一人ダイブマスター。そしてもう一人はアドバンスダイバー。
いくら4人のうち二人もインストラクターがいるとはいえ、私だったらこのガイドはしない。

沈船ダイブ自体は楽しかった。前を泳ぐインストラクターダイバーの泳ぎがあまりにも下手でひどく視界は悪かったけれど、もともと好きなタイプのダイビングだ。
ただ。
いくら沈船が呼び物の海域であっても、危険すぎる。アドバンスダイバー(最大深度30mしか行かないことになっている)の30m超えペネトレーションダイブ。聞いただけでもぞわぞわする。
しかもDECO(その深度にいられる最長時間を超えた状態)まで出してる。


夜、町のバーで飲んでいる時に知り合ったフリーランスのインストラクターに聞いてみた。「どこのショップも同じようなダイブするの?」
答えはもちろんNO。ただ、どのショップも、PADIというダイビング団体が作っているルールを、他の地域ほど厳密には守っていないようだ。
ガイドしているダイバーがどこまでリスクを理解しているのか、ちょっと首をかしげたくなるダイブオペレーションだった。ボート上しかり、水中しかり、さらに初心者ダイバーに対する態度しかり。

どこのショップも同じとは言わないようなので、Coronでダイビングをする予定の方、気を付けてくださいねー。

ただ、第二次大戦中の沈船というのがどこにでもごろごろしているわけではないので、ルールを守って、資格を持って潜りに行くのはとても楽しいところだと思う。
この日に潜った2艘以外にも、特徴のある沈船がいくつかあるみたい。Coronで長く潜っているダイバーの話も興味深かった。お客さんを連れて行かない船室などに入ると、骸骨なんかが残っていることもあるそうだ。

Coronには沈船だけでなくリーフダイブができるサイトもあるようだけれど、基本的には毎日沈船ダイブ。
男性に圧倒的な人気のある沈船ダイブだけど、ここの沈船は比較的流れのないところもあるみたいで、そんな沈船だったら女性でも楽しめるんじゃないかなぁ、と思う。
女性ダイバー、試しに行ってみてください。・・・あ、ライセンス取ってからね。





今年の冬のダイビング その1 ~エルニド・フィリピン~

2016年、去年の12月から3月いっぱい久しぶりの旅行に出かけた。ダイビングだけが目的じゃないし、働くわけでもないからぽつぽつとだけだけれど、行く先々で潜った。

器材は持ってきていない。移動させることを考えて器材をそろえていないので、全器材で数十キロにもなってしまう私の器材の中から必要最低限のものだけ。マスク、ダイブコンピューター、トーチ、水中カメラ、ラッシュガード、これだけ。
実際レンタルの器材で困ったのはフィン。私の足のサイズは小さすぎて、レンタルでもサイズギリギリ。しかも、これをはいた人に自力で泳がせる気はあるのかと思われるほど小さなフィン。間違うと手のひらよりも少し大きいだけのものが出てくる。
そして、ああ、持ってくればよかったー、と後悔したのは一人で浮上するときのためのSMB(浮上するとき、水面にむかって、浮上するダイバーがいることを知らせるマーカー)とスレート(水中でものを書くことができる白いプラスチックの板。これはカメラの色彩調整をするときにも使える)、そしてバンガー(ほかのダイバーの注意を引くために音を出すためのもの。私のバンガーは真鍮のクリップのようなものなので何かをぶら下げることもできる)。
要するに大きな器材はともかく、私が独自の使い方をしている小物類がなくて困った。

ともかく。

最初に潜ったのはEl Nido。
1時間も歩き回れば町全体をほぼ網羅できるほどの小さな町に数十件のダイブショップが乱立している・・・ように見える。とにかくビーチ沿いの通りはダイブショップの隣にまたダイブショップ。
日本人経営のショップもあるようで、後から聞いた話によると日本人ダイバーは皆そこに行くようだ。すでに十数年以上も日本人男性が経営しているという。

これだけダイブショップがあるといったい何を基準にショップを選べばいいのかわからなくなる。店頭に人がいるダイブショップでちょっと立ち止まって話を聞いてみると、値段はほぼ同じ。ただ、統一されているほどではない。インストラクター割引があるところ、ないところもまちまち。
その中で私が選んだ一軒Ranmarkという店は、水中の状態を質問した時に一番細かく、わかりやすく説明してくれた店。 メイン通りにあった看板を見て矢印の通りへ入っていく。通りというよりも建物と建物の間といったほうが的確かもしれない。・・・が、あとから気が付くと、実際に入った店は看板の店とは違っていた。まぁ、どっちでもいいんだけど。
ダイビングに行こうかなぁ、と思い立ったのが12月24日。どこで聞いても大型のショップは25日は海に出ないという。新し目で、しかも小型のショップのみがボートを出すらしい。

と、いうことでクリスマスにダイビング。
ボートにはほかにファンダイバーが3人。ガイドとアシストもつくという。ダイブサイトはNorth RockとHelicopter Island。
ボートは小型のスピードボート。バンカーと呼ばれるフィリピンの独特のボートでダイビングに行く店も多いし、実際ダイバーからはそのボートのほうが雰囲気があっていいという意見が多いらしいが、これからどんどんスピードボートが増えていくだろうとの話だった。

North Rockはギンガメアジの群れ、ロウニンアジなどが30m近い透明度の中を泳ぐ。

ガイドのRanceはEl Nidoですでに10年以上ガイドしているらしい。慣れた海を泳ぐ自信のようなものもうかがえる。

ただ、このサイト、小物は少ないところなのか、あるいはガイドが小物に興味がないのか、ほとんど指差しはなし。それでも、私が一人できょろきょろしていると、岩陰にはバンブーシャーク、モンハナシャコなど隠れているものもたくさんいる。

2本目、Helicopter Islandは砂地の多いダイブサイト。
タイマイが見どころらしく、それ以外はほとんどスルーするダイブだったけれど、よく見れば砂地にあれこれといる。
クリスマスプレゼントのつもりか、タイマイはゆっくりと私たちを気にせずに泳いでくれた。
ちなみに、店で話を聞いたときにはときおりレザーバックタートルも見られるらしい。 ただしレザーバックが見られる確率は10%くらいだそうだ。


このショップRanmarkのオーナーは二人のフィリピン人。そのうちの一人Marioはアシストでボートに乗っており、少々話す時間があった。
この日インストラクターになって4日目、という超新人インストラクターのMario。そんな話を気軽にお客である私に話してしまうほど気さくなひとだった・・・まぁ、ほかのダイバーには言わないほうがいいような気もするけど。
El Nidoはダイビングが盛んになってからまだ15年ほどしか経っていないという。 そのせいか、あるいはそういう海質なのか、リーフも元気でしかも透明度がいい。

1日潜っただけでは何とも言えないけれど、働いてみたらなんだかたくさん見られるような感もあった。ただ、今まだ発展途中のこの町に、さらに人が増えたら当然ダイバーも増えることになり、そうなったときに今あるショップのダイバーたちがどれくらい海を守ることができるのか。
がんばれEl Nidoのダイバーたち!