2014/09/29

作り置きめんつゆ

ドイツにいて、基本的に日本食をつくることはない。
Wolleが白いだけのご飯があまり好きではないということがひとつ。私がドイツ料理が上手になりたいという理由がひとつ。

大体、日本食が作りたくても、日本でそろう材料の量と比べると、日本食用の材料が売っていることはまずない。お豆腐もないし、もちろん油揚げもない、納豆もなければ味噌もない。新鮮なお魚など皆無。冷凍であっても海鮮類はないに等しい。お野菜も季節のものが数種類と、おいもとたまねぎ。季節以外のものは冷凍になっているもの。


そんなところでも、ごくたまに、おだしで割ったしょうゆ、いわゆるめんつゆのようなものが必要になることがある。
一人でお昼。さあ、今日こそいつも食べられないおそうめんを・・・。なんていうときに。


でも、ここで、一人分のおだしを取るのは面倒。さらに、一人分のすすりこむおそうめんのために、昆布を一切れ使うのは、限りある日本食材料にもうしわけない気もする。

そこで考え出したのがこれ。
作り置きめんつゆ。






作り方は恐ろしく簡単。
必要なのは、だし用の昆布、鰹節、そして、しょうゆ。

適当な容器に昆布と鰹節をつめる。そこに、おしょうゆをたっぷりといれて置くだけ。2週間もすれば、市販で濃縮されて売っているめんつゆ程度にはなる。

しかも、容器さえきれいに殺菌してあれば、おしょうゆと同じくらいだけ持つんじゃないかしら。


不自由なところにいると、知恵っていうのは普段よりも回るものなのかなぁ。






ベジタリアン考

こんな言い方をしていいのかどうかわからないけれど、「ベジタリアン」という種類の人たちがいる。
日本語で言えば一般に「菜食主義」とでも言うのだろうか。


ベジタリアンという言葉だけ聞くと、単に「肉類を食べない」というイメージがわく。
ところがこれが実にさまざまで、単に「肉を食べない」「魚介類も食べない」「乳製品も食べない」などなど、個人個人によって異なる。
これが、宗教が理由のベジタリアンなら、どこが線引きの理由なのかはっきりする。
が、個人の主義でベジタリアンな場合、「なぜ?」というのが私の頭にいつもわく疑問。


「私は肉類の味が嫌いだから、肉を食べない」
というのなら極自然に理解できる。
これは「主義」の問題ではなく「好み」の問題。


私の友達にも何人もベジタリアンがいる。
いくつか例を挙げてみよう。


ベアントの場合:
肉類、卵を食べない。魚介類、乳製品は食べる。
彼は単に肉類を食べないことを主義にしている。卵を食べないのは単に「味が嫌い」だから。
ロッククライマーの彼は常に「よい食品」を求めている。少量でかつ即エネルギーになるものを好む。たとえばドライフルーツ、ナッツ、はちみつ等。
ドイツ人の彼は、バーベキューのパーティなどには比較的顔を出さないが、出かけてくるときには必ず自分で必要な食料を持参してくる。・・・そしてなぜか残りはおいていくので、うちにはベアントが残していった、誰も食べないドライフルーツのパックなどが転がっていることがある。


ドイツ人でベジタリアンという人は比較的少ない。こんなにお肉がおいしい国で、しかも、これだけお肉を食べる国でベジタリアンというのはなかなか難しいものがあるんじゃないかと思う。




ステファンの場合:
肉類を食べない。魚介類は食べる。卵、乳製品に関しては時期によって自分で調節しているらしい。
彼は動物性の肉食品に関しては徹底して口に入れない。
例えばお菓子のグミ。実はこの製品の材料に動物性のものが入っていることが多い。ゼラチン質のようなものだ。こういう材料にも徹底してこだわるから、何が入っているかよくわからないものを目の前にすると、まず材料を疑う。
彼がベジタリアンになったゆえんは、「昔大好きだった彼女がベジタリアンで、少しでも彼女と同じになりたかったから。」
いかつい顔をして「好きになった人と同化したいっていうのは、誰でも思うことだろう?」なんて真顔で言われると、さすがラテンの熱い血が流れている、と、こっちも真顔で思ってしまう。


彼曰く、動物性のものを徹底して口に入れないでいると、血の気が多い人も落ち着く。
彼がその大好きだった彼女と別れて後もそのままベジタリアンでいる理由もそこにあるという。
・・・が。ベジタリアンでいても、十分血の気がある・・・というか、興奮しやすい彼が、お肉を食べたらどうなってしまうんだろう、と、ひそかに彼がベジタリアンであることをうれしく思った。






この二人は私が知っているベジタリアンでも顕著なひとたち。しかも友達としても近しい・・・あるいは近しかった。


このほかに「お肉が嫌いだから」という理由で肉類のみ食べないベジタリアンがドイツのご近所さんのマヌ。
でも、彼女がバーベキューパーティを開くときにはちゃんとお肉も用意されている。でもその他に、ドイツでは比較的高価な魚も、あるいはチーズの固まりもアルミニウムフォイルに包まれて火にかけられる。・・・マヌはとてもフレンドリーなのだ。
彼女の影響か、血か、お嬢さんもお肉を食べない。まだ14歳くらいだというのに、体がしっかり育つんだろうか、などといらぬ心配をしてしまう。


Wolleの姪っ子のマヤが私に一言漏らしたことがある。
「マヌもね、○○(お嬢さんの名前、忘れちゃった)もね、お肉を食べないんだよ。おかしいね。
おいしいのにね」と。
バーベキューでは、子供がいればソーセージを必ず用意し、それしか食べない10歳のマヤにとって、お肉を食べないということは「不思議なこと」以外の何ものでもないのかもしれない。




もう一人。かわいいベジタリアン。
ズーレンの場合:
彼は13歳。男の子の割りに、比較的やんちゃなことをしない彼。なぜかキッチンが大好き。
最近「ベジタリアン」なるものに興味を持ち、自分も試してみることに・・・。
去年まではバーベキューをするときなんかに、自分の手料理の肉料理を用意したりしていたのに、今年はなぜかケーキを用意してきた。
「どうしてケーキなの」って聞いたら、「僕はベジタリアンになったんだ」とのこと。


私たちの結婚ーパーティにも素敵なケーキを焼いてきてくれた。その彼がお手伝いに頼まれたのが夕食のブュッフェの豚肉を切り分ける係り・・・。
彼のベジタリアン転向を聞いていた私たちはみんなで大笑いした。
彼とて肉類が嫌いでベジタリアンになったわけじゃないのに、食べられないおいしそうなお肉を他の人のために切り分けるのは、さぞかしつらかろう、と。






ところで、日本人でベジタリアンという人はほとんど知らない。
私が知っているのはたった一人。彼女はお肉を噛む感触が嫌いで肉を食べない。


ただ、例えばここドイツと比べると、日本人は一般的な日本食の生活をしていれば、お肉の摂取量は極端に少ない。
特にステーキなんかをわざわざ食べに行かなければ、口いっぱいにお肉をほおばる、なんていうことはめったにないはず。
焼肉なんかでも、必ず食事の数割は野菜を食べていると思う。


ちなみにドイツでよくするバーベキュー。
ステーキと、ソーセージと、ハンバーグ。
・・・え?それだけ?
なんて事もある。
私が用意するときにはあれこれみんなも食べそうな野菜を一生懸命用意したりもする。でも、たいていは残る。
これこれ、食事にはバランスってものがあるでしょ。とか、なんとか言いたくもなるけど、それ以前に、お肉ばっかり口に入れてたら逆に満足しないんじゃないかとも思うけど。


こうしてみると、日本人ってずいぶんたくさん「肉以外の食品」を食べるものだな、なんて思う。
大豆の加工品、魚介類、これだけでも食事の何割かを占めるんじゃないかと思う。




さて、ベジタリアンの話に戻ろう。
私が知っているベジタリアンの人たち。
正直に言うと癖のある人が多いように感じる。
自分の食生活にまで主義を取り入れるくらいだから、他のことだってこだわるに決まってる。
自分の意思や意見がはっきりしていて、概して周囲の人の意見を受け入れることが少ない。
まさに、わが道をゆくタイプだ。
まぁ、わが道をひたすら歩いてでもいない限り、世にある肉類を無視する、などということは起こらないと思うけれど・・・。


が。
今ひとつ気づいたことがある。私の知っているベジタリアンたち、まだ少年のズーレンを除いて、ほぼ全員喫煙者だ。アルコールもしっかり摂取する。
彼ら。健康に留意してベジタリアンでいるわけではなさそう・・・。






最後にもう一人。
自称ベジタリアンの、なんちゃってベジタリアン・・・だと私は思うんだけど。
ホンジュラスで同じダイブショップで働いていた女性。


あるとき、当時最近できたおいしいバーガー屋さんのハンバーガーを私がほおばっていると、隣に彼女。
「バーガーなんて食べてるの。ああ、気持ち悪い。そんな不健康な食べ物はないのよ。私はベジタリアンなの。あなたも私みたいに、少しは健康に留意したらどう?」


かくいう彼女がすすっていたものは、インスタントのカップヌードル・・・。
ベジタリアンを誇る彼女は、インスタントのヌードルにどれくらい動物性のものが入っているのか知らなかったんだろうか。私のおなかに入っていくバーガーのほうが、彼女がすすっているものよりもはるかに健康的だと思うけど・・・。

なんだか、それを聞いて彼女のことがちょっとかわいそうになったけど、かわいそうすぎて「でも、おいしいよ」って言うだけにしておいた。
彼女はいまだにベジタリアンで、インスタントヌードルをすすっているんだろうか・・・。






各人考え方もあるし、主義もあるだろうし、好みだってある。
でも、例えば食材のうち数%を自分の世界から排除する、という行為は、食事だけにとどまらないんじゃないだろうか。
そういう好み、あるいは趣向を取り入れる人は、気づかないうちに自分の周囲にいる人の数%を排除して生きてはいないだろうか。自分のできること、するべきこと、すべてにおいて数%排除、あるいは見ない振りをして生きていたら、自分の可能性や世界を自ら狭めることになりはしないんだろうか。
私のような欲張りは、その数%を「試してみなくちゃもったいないでしょ」なんて思ってしまう。






肉、肉、と野菜よりも肉のほうが好きなように聞こえるかもしれない。
確かに私はお肉が大好き。
でも先週末、少し離れたところに住む友達の家へ泊りがけで遊びに行ったときのこと。


彼らは大量のビーフステーキとソーセージを用意して待っていてくれた。
やっぱりステーキはポークよりビーフよね、なんて、大喜びで食べていたのだけれど。翌日も、その翌日も、ステーキとポテトだけの食事。


気がついたら、お肉に飽きていた。もういいよ、お肉。なんか、野菜ないの、ポテト以外の・・・。普段大好物のチーズも、朝食の卵も食欲が出ない。これだって動物性のもの。


ああ、お肉ってお野菜と一緒に食べるからおいしいのよね。
お野菜だって、お肉と一緒に食べるからおいしい。


おいしければ、お肉だってお野菜だっていいのだ!・・・というのは主義にはならないでしょうか。



2014/09/09

ブタのアブラ

前述のドイツ料理の本を手に入れてから、その本に載っている料理ばかり作っている。


簡単にドイツ料理の本、なんて言っているけれど、実はドイツ料理じゃないものもたくさん載っている。パスタやピザ、タイトルに「中華風」なんてついているのもあるし、カレーの類なんかも入っている。


が、やっぱり圧倒的に多いのはドイツ料理。


一度作ってみて、うまくいかなかった料理は再度リベンジなんかもしてる。
あ、ついでにここで言っておくと、先日Zucker(砂糖)とZuckerschoten(さやえんどう)を間違えた料理も再挑戦してみた。
さやえんどうは遠くのスーパーマーケットまで行かないと手に入らないので、代用としてグリーンピースを使った。
今回は甘くなく、一般的なソースの味になった・・・・当たり前だけど。その代わり・・・といってはなんだけど、なんともない、普通の料理になった。むしろ、砂糖を少し入れたら、ちょっとは独創的なものになりそうな・・・・。


さて、この本に載っているドイツ料理は、クラッシックなものが多い。
カロリーを少なめに、とか、コレステロールをためないように、とか、そんなことを考慮してあるレシピではない。


そこで気がついたこと。
ブタの脂、すなわちラードをよく使うということ。
前もって炒めておくものとか、野菜なんかもその脂で炒めたりする。


もちろんお肉屋さんにもブタの脂が売ってる。
私が普段使っているのは、脂を燻製にしたもの。
要は、ベーコンの脂身の部分だと思ってくれるといい。残念なことに、なぜか最近このブログを書くときに写真がうまくページに反映されないので、これです、といえないのだけれど。
まっ白な脂の周りがベーコンのように茶色になってる。


この脂。
冷蔵庫に入れておけば硬い。冷蔵庫に入れなければ、油脂なのでやわらかくなる。でも、一度燻製にしてあるものなので形はもちろん保ったまま。
これを極薄切りにしてそのまま口に入れても塩味が効いていてすごくおいしい。


私が調理しているときに、Wolleが周りをちょろちょろしていて、これをポンと口に放り込むのをはじめて見たときには驚いたものだ。
「何してんの、それ脂だよ!」
そんなに塩味が効いているとは知らなかったので、見て、気持ち悪くならないのかなぁ、なんて思った。まぁ、生の玉ねぎも口に入れてしまう彼のことだから、大丈夫なんだと思うけど。
・・・と、そんな私も今では調理中に極薄いものを口に入れることも・・・。


この脂の塊を薄切りにしてフライパンに乗せて中火にかけておくと、数分で脂が溶け出し、料理に使う、というわけだ。
オリーブオイルや他の植物オイルを使うよりも断然料理にうまみが出る・・・のは当たり前だ。


そしてこの脂は、燻製になっているせいなのか全部溶けることはない。
フライパンに脂がいきわたるころには、脂を出し切った残りがカリカリになって残っている。


と、これがまたおいしい。
ちょっと塩辛いけど、ビールのおつまみにはぴったり。なにか揚げ物のような味と歯ごたえ。


驚くことに、牛肉の料理にもこれを使う。
牛肉はおいしいけれど、脂身が少ない、ということで、牛肉を巻いて煮込むような料理にも、この脂を巻き込んで煮込んだりする。
私の日本的感覚では、牛肉の料理にブタの脂を使うなんていうのは、味が混ざってしまうような気がするけれど、これはこれで、すごくおいしい。


何日か前に気がついた。
あれ、最近Fett(脂)をよく買ってるなぁ、と。
数日前に買ったばっかりなのに、もうストックがなくなってる・・・なんて。


そんなことに気がついたものだから、今度はその使用量が気になってきた。
こんなに脂を摂取していていいんだろうか。絶対にカロリーは高いはず・・・。
私もWolleもドイツにいるときにはろくに運動なんてしないのに・・・。そんなものを使わなくたって、二人ともドイツにいる間むくむくと大きくなってしまうのに・・・。


ちょっと気になって調べてみた。
ラード大さじ1杯のカロリーを消化するのにジョギング26分だって・・・。
私がいくら奮起してジョギングに出かけたところで、こんなに毎日豚脂を摂取していたら確実に横幅が成長するはず・・・。
ちなみにこれを調べたのはこちらのページ;
カロリーSlism ←クリックするとそのページに移動します




でもね、その代わり料理は格段においしくなる。


うちは二人だけの家族だということもあって、ちょっと贅沢に調理用にはオリーブオイルだけを使っていた。ドイツでは一般に調理用には菜種油を使うことが多いみたいだけど。


例の料理の本を手に入れてからは、レシピどおりに作っているせいかオリーブオイルと豚脂が半々・・・?




でもねー、豚脂を使うと、料理が簡単においしくなる。
どうしてこれを無視できようか・・・。


ちなみに脂を使った料理のレシピも調べてみた。
脂を使ったレシピ


みてみてください。
コクというか、こってり感というか、そういうものを出すのにはもってこいな材料。




でもまぁ、おいしいおいしいとはいえ、あんまり材料や栄養が偏らないように気をつけないといけないよなぁ・・・・と、これを書いている今、その最中でさえ思う。
おいしいものを食べて、ちょっぴりころころするか、我慢して自分が健康だと思い込むか、一体どっちがいいんだろう。


何事も限度ってものがあるから、この豚脂の使用量も、ちょっと気をつけなくてはいけない、とちょっとだけ気にし始めたここ数日。
レシピに忠実に作るのもいいけど、一通りレシピどおりに作ることを楽しんだら、少しレシピをアレンジして脂の使用量を減らすのも手かなぁ・・・なんて・・・。