去年ドイツ語のコースを取り始めた時の話。
最初の授業の時のお決まりの自己紹介。言語コースでの自己紹介といえば、自分の国籍、家族、ドイツにすでにどれくらいいるか、そしてお決まりの趣味等々。まぁ、どの参加者の自己紹介も大体同じような内容になる。
ところがその時は、先生からのリクエストで「ドイツ語で好きな単語は何ですか」というものがあった。
好きな単語?
頭の固い上に初日で緊張していることも手伝って、私は単語に好きも嫌いもあるものかと思った。覚えなくちゃいけないものは覚えなくちゃいけなくて、嫌いだから覚えません、なんてことはできない。
でも。
よく考えてみると、好きな単語、嫌いな単語がある。
音の並びが好き、意味が好き、面白い発音だから好き。
あるいは、日本語で音を聞いたときに聞こえがよくないから嫌い、覚えにくくて嫌い。
ほかの参加者がその質問に対してどう感じたかよくわからないけれど、みんなそれなりに答えていた。
Ich mag das Wort"Merone".・・・・僕はメロンという言葉が好きです。
Ich habe kein Lieblingswort, aber ich mag das Wort "unterwegs" nicht. ・・・・私はお気に入りの言葉はないけど嫌いな言葉はunterwegs(途中で)です。
おお、みんなちゃんと答えてる。よくまぁ、そんなに急に思いつくなぁ、なんて感心した記憶がある。皆さん理由もまちまち。メロンの彼は、メロン自体が好きだからという理由。「途中で」が嫌いな彼女はどうしても音が耳障りだという理由。私にとってはどちらの単語にも好感も不快感も感じない。
私は何を答えたかというと・・・・何も答えなかった記憶がある。確か、何か言い訳をしたような気もするけどもうよく覚えてない。
この自己紹介の時の質問は、意外な質問だったこともあり、あるいは自分がその時に答えることができなかった質問のせいもありか、時々思い出すことがある。
ゆっくり考えてみれば好きな単語というのはちょこちょこあるものだ。
ここでひとつ、今でこそ私の好きな単語。
umarmen
これは「抱きしめる」という意味。umは「その周りの」、とか「周辺」などを意味する接頭語、あるいは前置詞にもなる。そしてarmenというのは「腕」という意味のArmが動詞化したもの。これを二つ合わせると、「腕を周囲に」というようなニュアンスになり、動詞の意味としては「抱きしめる」となる。
意味が好きなわけでも、音が好きなわけでもない。私にとっては上に説明したような、単語の作り方が面白いと思う。日本語で雪が崩れると書いて雪崩(なだれ)と読むのと似ている気がする。そういえば日本語で当て字のように使われる単語はどれも漢字と意味を合わせるとなるほど、と思うものがよくある。
もうひとつ。
Kopfkino
これは辞書を引いても出てこない…少なくとも私の辞書には。
Kopfというのは「頭」のこと。そしてKinoは「映画館」。何か些細なことから、どんどん想像が膨らんでいって、ストーリーまでできていってしまう状態のことをいう。
なるほど。まるで頭の中で映画のように話が進んでいってしまうような状態だ。想像というより妄想というか・・・。
仲のいい友達のHeiniは話が途切れた時によくにやにやしていることがある。そんな時「どうしたの?」って聞くとたいていはこんな答えが返ってくる。
Nichts,einfach Kopfkino.・・・何でもないよ。ただのKopfkino。
私から見るとHeiniはほかの人より頻繁にKopfkinoを楽しんでいるように見える。
日本語で言ったらどんな言い回しになるんだろう。白昼夢とでもいうんだろうか。そういわれれば、白昼夢っていう単語も結構面白い言い回しではあると思う。
最後にもう一つ。
Sandkastenfreund
これも辞書に出てない。
Sandは「砂」。Kastenは「箱」。合わせて、「砂場」。Freundは「友達」。女の子の友達ならFreundinになる。これを全部合わせてみるとこの単語がどんな意味なのか想像できる。砂場友達・・・・砂場で一緒に遊ぶ友達・・・・日本語で言うと「幼馴染」だ。
それが異性になるとSandkastenliebeなどともいわれる。Liebeは「愛」。砂場で遊ぶほどに幼いころに大好きだった女の子、男の子。幼い初恋の相手とでも言おうか。
この単語。なんとかわいらしいことか。
Kopfkinoではないけれど、砂場でくっついて遊ぶ小さな子供を頭に浮かべてしまう。
面白いことに、今あげた3つの単語のうち2つは辞書に載っていない。私としてはせっかくこんなに面白く、かわいらしい単語なのになぜ、などと思ってしまうけれど、きっと日本語にも面白い単語でも辞書に載っていないものがたくさんあるんだろうと思う。
ちなみに私と二人でドイツ語日本語をお互いに教えあっているKarolineは「おてんこ盛り」という言葉を初めて聞いたときに「かわいーい」と言って笑った。おてんこ盛りなんて、意味を考えれば決してかわいい意味ではないのだけれど、音の響きがかわいいという。なるほど。
言語を習っているとき、単語というのは私にとって鬼門である。これは今に始まったことではなく大学受験の英単語でも苦労した。そして苦労したにも関わらず最後まで伸びなかったところでもある。
が、これを学習という観点から離れてみてみると、もともと言葉が好きなだけあって面白く感じることがたくさんあるということに「好きな単語は何ですか」という質問で気づかされた思いである。
まぁ、ただ、どの単語も「おもしろーい」「かわいーい」と 喜んで覚えることができるものばかりではないことは確かで、だからこそ鬼門になってしまうのではあるが。
最初の授業の時のお決まりの自己紹介。言語コースでの自己紹介といえば、自分の国籍、家族、ドイツにすでにどれくらいいるか、そしてお決まりの趣味等々。まぁ、どの参加者の自己紹介も大体同じような内容になる。
ところがその時は、先生からのリクエストで「ドイツ語で好きな単語は何ですか」というものがあった。
好きな単語?
頭の固い上に初日で緊張していることも手伝って、私は単語に好きも嫌いもあるものかと思った。覚えなくちゃいけないものは覚えなくちゃいけなくて、嫌いだから覚えません、なんてことはできない。
でも。
よく考えてみると、好きな単語、嫌いな単語がある。
音の並びが好き、意味が好き、面白い発音だから好き。
あるいは、日本語で音を聞いたときに聞こえがよくないから嫌い、覚えにくくて嫌い。
ほかの参加者がその質問に対してどう感じたかよくわからないけれど、みんなそれなりに答えていた。
Ich mag das Wort"Merone".・・・・僕はメロンという言葉が好きです。
Ich habe kein Lieblingswort, aber ich mag das Wort "unterwegs" nicht. ・・・・私はお気に入りの言葉はないけど嫌いな言葉はunterwegs(途中で)です。
おお、みんなちゃんと答えてる。よくまぁ、そんなに急に思いつくなぁ、なんて感心した記憶がある。皆さん理由もまちまち。メロンの彼は、メロン自体が好きだからという理由。「途中で」が嫌いな彼女はどうしても音が耳障りだという理由。私にとってはどちらの単語にも好感も不快感も感じない。
私は何を答えたかというと・・・・何も答えなかった記憶がある。確か、何か言い訳をしたような気もするけどもうよく覚えてない。
この自己紹介の時の質問は、意外な質問だったこともあり、あるいは自分がその時に答えることができなかった質問のせいもありか、時々思い出すことがある。
ゆっくり考えてみれば好きな単語というのはちょこちょこあるものだ。
ここでひとつ、今でこそ私の好きな単語。
umarmen
これは「抱きしめる」という意味。umは「その周りの」、とか「周辺」などを意味する接頭語、あるいは前置詞にもなる。そしてarmenというのは「腕」という意味のArmが動詞化したもの。これを二つ合わせると、「腕を周囲に」というようなニュアンスになり、動詞の意味としては「抱きしめる」となる。
意味が好きなわけでも、音が好きなわけでもない。私にとっては上に説明したような、単語の作り方が面白いと思う。日本語で雪が崩れると書いて雪崩(なだれ)と読むのと似ている気がする。そういえば日本語で当て字のように使われる単語はどれも漢字と意味を合わせるとなるほど、と思うものがよくある。
もうひとつ。
Kopfkino
これは辞書を引いても出てこない…少なくとも私の辞書には。
Kopfというのは「頭」のこと。そしてKinoは「映画館」。何か些細なことから、どんどん想像が膨らんでいって、ストーリーまでできていってしまう状態のことをいう。
なるほど。まるで頭の中で映画のように話が進んでいってしまうような状態だ。想像というより妄想というか・・・。
仲のいい友達のHeiniは話が途切れた時によくにやにやしていることがある。そんな時「どうしたの?」って聞くとたいていはこんな答えが返ってくる。
Nichts,einfach Kopfkino.・・・何でもないよ。ただのKopfkino。
私から見るとHeiniはほかの人より頻繁にKopfkinoを楽しんでいるように見える。
日本語で言ったらどんな言い回しになるんだろう。白昼夢とでもいうんだろうか。そういわれれば、白昼夢っていう単語も結構面白い言い回しではあると思う。
最後にもう一つ。
Sandkastenfreund
これも辞書に出てない。
Sandは「砂」。Kastenは「箱」。合わせて、「砂場」。Freundは「友達」。女の子の友達ならFreundinになる。これを全部合わせてみるとこの単語がどんな意味なのか想像できる。砂場友達・・・・砂場で一緒に遊ぶ友達・・・・日本語で言うと「幼馴染」だ。
それが異性になるとSandkastenliebeなどともいわれる。Liebeは「愛」。砂場で遊ぶほどに幼いころに大好きだった女の子、男の子。幼い初恋の相手とでも言おうか。
この単語。なんとかわいらしいことか。
Kopfkinoではないけれど、砂場でくっついて遊ぶ小さな子供を頭に浮かべてしまう。
面白いことに、今あげた3つの単語のうち2つは辞書に載っていない。私としてはせっかくこんなに面白く、かわいらしい単語なのになぜ、などと思ってしまうけれど、きっと日本語にも面白い単語でも辞書に載っていないものがたくさんあるんだろうと思う。
ちなみに私と二人でドイツ語日本語をお互いに教えあっているKarolineは「おてんこ盛り」という言葉を初めて聞いたときに「かわいーい」と言って笑った。おてんこ盛りなんて、意味を考えれば決してかわいい意味ではないのだけれど、音の響きがかわいいという。なるほど。
言語を習っているとき、単語というのは私にとって鬼門である。これは今に始まったことではなく大学受験の英単語でも苦労した。そして苦労したにも関わらず最後まで伸びなかったところでもある。
が、これを学習という観点から離れてみてみると、もともと言葉が好きなだけあって面白く感じることがたくさんあるということに「好きな単語は何ですか」という質問で気づかされた思いである。
まぁ、ただ、どの単語も「おもしろーい」「かわいーい」と 喜んで覚えることができるものばかりではないことは確かで、だからこそ鬼門になってしまうのではあるが。
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