あっという間に夏も終わり、もう秋かしら、なんていう10月も過ぎ、はや11月。今年の10月は日本で過ごした。なんていうと、日本の出来事の話になるんじゃないかと思われるかもしれないが、そこはスキップして日本からの帰り道。
説明が長くなりそうだけど、私が予約していたAir Berlinとういう航空会社がこの夏潰れ、その代行にEthihadがフライトを用意してくれた。・・・のはいいんだけど、予約した通りのフライトではなく、往路はベルリンの代わりにフランクフルト発、復路はミュンヘン着の飛行機に・・・。
なんということ。ミュンヘンからうちまでICE(ドイツの新幹線のようなもの)を使っても乗り換えなしで7時間。これは飛行機を振り替えたといえるんだろうか、と思うほどの距離。いくら電車代は航空会社が持つと言われたってなんだか納得がいかない。でも、アブダビからベルリンへ新たな飛行機を予約するよりはましのような気もする。この2つからどちらか選んでいいよ、と言われても困るような2択だ。まぁ、選ばせてはくれないけど。
さて、私の乗るアブダビ発ミュンヘン行きの飛行機は見事に1時間半も遅れ、本当なら余裕があったはずなのに、予定していたミュンヘン発の電車には35キロの荷物を持った私には到底間に合わない。
仕方がないので今夜私の目的地に着くための最終電車を待つも、テクニカルプロブレムで遅れて発車。しかもこの列車だと途中で乗り換えないといけない。
乗り換え時間は5分。すでに10分以上遅れている列車が間に合うわけはないのだが、車掌さんに聞いてみると、乗り換えの電車は遅延を待っているとのこと。よしよし。そうだよね。じゃなくちゃ、困るよね。なんてのんきに構えて乗換駅で降りてみると、そこにはすでに電車はない。次の列車は30分後にうちから1時間以上は離れている町を通る列車のみ。
もう途中の大きな町で宿泊するしかないと覚悟を決めて家に電話すると、どこそこの駅まで来れば、車で迎えに行くとのこと。肩を壊して車の運転のできないWolleの代わりに近くに住む友達が運転してくれる、と。私のせいではないとはいえ、何とも申し訳ない。しかも到着時刻は夜中の1時半・・・。声を大にして苦情を言いたいところだが、ドイツの鉄道の駅に、そんな時間に駅員がいるわけもなく・・・。
吹きさらしのホームで、母から借りてきたダウンに感謝しながら列車を待っていると、ホームにアナウンスが・・・。あれ!駅員さんどっかにいるじゃん!・・・なんてことよりも先に、私は駅のアナウンスを集中して聞いていないとよく聞き取れない。
すると。
アナウンスが終わったと同時に、いつの間にか近くにいたおばちゃんが
「なんだって?今なんて言ってたの?あなた聞いてた?なんだって?」
と、ものすごい早口で迫ってきた。思わず一歩下がってしまいそうな勢いだ。
私は、と。何よりもそのおばちゃんの勢いに負けて言葉が出てこない。出てくるのは、いうなれば「あの、あの」なんていう感じの意味のない言葉ばかり。
ちょと、ちょっと、待って、おばちゃん。聞く相手間違ってんじゃないの。私の顔、どう見たって外人でしょ。ドイツ人に見えないでしょ。ドイツ語怪しそうでしょ。 どうして、5歩向こうの純ドイツ人っぽい人に聞かないで私に聞くのよ。
自分でもなんだかおかしくなってしまって、一呼吸して言う。「すみません。私ドイツ語あんまり上手じゃないもんで、うまく言えなくて…。」
すると、おばちゃん。さっきよりは迫力が減ったものの、まだこちらに向かって進んでくる。「遅延なの?列車遅れてるの?」
「いやいや、遅延じゃないですよ。次の列車、1等席が省かれてます、って。だから、この辺にいれば2等来るんじゃないですかね」
私の言葉を聞いて、やっとおばちゃんがほっとした顔をする。
「あなた、ドイツ人に聞き取れないアナウンスを聞き取れてるんだから、十分ドイツ語できるんじゃないの」
あいやー。どうもありがとうございます。
このおばちゃん、この後列車が来る直前まで延々と話を続けた。どうやらその日に同窓会があったらしく、気分がよかったのかもしれない。
ところで、このホームのおばちゃんは十分なんて言ってくれたけど、これこそが私の問題なのだ。
相手の言ってることはわかるのに、自分から発話できない。
これは、学んでいる外国語を話す国に住んでいる外国語学習者が陥りやすい穴なんじゃないかとと思う。
文章の中のおおまかな単語と並びで、相手の言っていることはほとんどわかってしまう。でも、例えば前置詞、例えば後置詞なんかは全然聞き取っていないので、自分で発話するときにどの前置詞、後置詞を使えばいいのかよくわからない。 そして、適当に使うと意味が違う。
高校生の時に英語の学習で出てきたイディオムというのを覚えているだろうか。まさにあれだ。
「~の前に」と英語で言いたいときには「in front of」。ただの「front of」ではないのだ。このinがあるかないかで、ちゃんとした英語に聞こえるか聞こえないかに大きく差が出てくる。inがないと意味は分かるけど不自然なのだ。
要するに、私の発するドイツ語はきっと不自然なのだ。・・・自分ではよくわからないけれど。
そして、それを克服するには、イディオムをきちんと記憶する、という私の苦手を通り越した領域を制覇しなければならない・・・のだと思う。
曲りなりに、私が英語の母語話者の友達とわいわいやっていけ、何かおかしな言い回しをすると「今Yasが変なこと言ったー」などと笑われていられるのも、高校の英語文法の授業と、大学受験のための暗記が効をなしているのだ。
一方、大学受験ほど緊迫感のないこのドイツの生活で「イディオムを暗記する」というのはどんな技かはわからないが、その至難の技を超え、スーパートリプルA級を4回続けて見せるほどに私にとっては難しい。
理由があることを記憶しろと言われるならばそれほど難しくないのだけど、私は恣意的な事柄を記憶する能力に極端にかけている気がする。
もちろん人の名前を記憶するのも苦手だ。覚えなくちゃいけない人の名前は、昔々弟が試してみた超暗記法とかいったと思われる「何かに関連付けて記憶する」という方法に頼っている。
ま、そんな言い訳はいいとして。この目の前にある問題点。そして、その解決策を苦手とする私にとってできること・・・。やっぱり「こつこつ」ですかね。(この「~ですかね」という言い回し、以前「この人どうにもならないなぁ」なんて思ってしまった人がよく使う言い回しだったのでいつも使うのをためらうのだけど、ここではこれしか言いようがない・・・。)
高校の入学式で校長先生がまじめになのかウケ狙いなのか言った言葉。「勉強のコツはコツコツです」。その時にはばからしい、と鼻にもひっかけなかったけど、実際問題、そこが突き詰めた事実なのかもしれない。さすが校長。
コツコツ行きますか。コツコツと。
説明が長くなりそうだけど、私が予約していたAir Berlinとういう航空会社がこの夏潰れ、その代行にEthihadがフライトを用意してくれた。・・・のはいいんだけど、予約した通りのフライトではなく、往路はベルリンの代わりにフランクフルト発、復路はミュンヘン着の飛行機に・・・。
なんということ。ミュンヘンからうちまでICE(ドイツの新幹線のようなもの)を使っても乗り換えなしで7時間。これは飛行機を振り替えたといえるんだろうか、と思うほどの距離。いくら電車代は航空会社が持つと言われたってなんだか納得がいかない。でも、アブダビからベルリンへ新たな飛行機を予約するよりはましのような気もする。この2つからどちらか選んでいいよ、と言われても困るような2択だ。まぁ、選ばせてはくれないけど。
さて、私の乗るアブダビ発ミュンヘン行きの飛行機は見事に1時間半も遅れ、本当なら余裕があったはずなのに、予定していたミュンヘン発の電車には35キロの荷物を持った私には到底間に合わない。
仕方がないので今夜私の目的地に着くための最終電車を待つも、テクニカルプロブレムで遅れて発車。しかもこの列車だと途中で乗り換えないといけない。
乗り換え時間は5分。すでに10分以上遅れている列車が間に合うわけはないのだが、車掌さんに聞いてみると、乗り換えの電車は遅延を待っているとのこと。よしよし。そうだよね。じゃなくちゃ、困るよね。なんてのんきに構えて乗換駅で降りてみると、そこにはすでに電車はない。次の列車は30分後にうちから1時間以上は離れている町を通る列車のみ。
もう途中の大きな町で宿泊するしかないと覚悟を決めて家に電話すると、どこそこの駅まで来れば、車で迎えに行くとのこと。肩を壊して車の運転のできないWolleの代わりに近くに住む友達が運転してくれる、と。私のせいではないとはいえ、何とも申し訳ない。しかも到着時刻は夜中の1時半・・・。声を大にして苦情を言いたいところだが、ドイツの鉄道の駅に、そんな時間に駅員がいるわけもなく・・・。
吹きさらしのホームで、母から借りてきたダウンに感謝しながら列車を待っていると、ホームにアナウンスが・・・。あれ!駅員さんどっかにいるじゃん!・・・なんてことよりも先に、私は駅のアナウンスを集中して聞いていないとよく聞き取れない。
すると。
アナウンスが終わったと同時に、いつの間にか近くにいたおばちゃんが
「なんだって?今なんて言ってたの?あなた聞いてた?なんだって?」
と、ものすごい早口で迫ってきた。思わず一歩下がってしまいそうな勢いだ。
私は、と。何よりもそのおばちゃんの勢いに負けて言葉が出てこない。出てくるのは、いうなれば「あの、あの」なんていう感じの意味のない言葉ばかり。
ちょと、ちょっと、待って、おばちゃん。聞く相手間違ってんじゃないの。私の顔、どう見たって外人でしょ。ドイツ人に見えないでしょ。ドイツ語怪しそうでしょ。 どうして、5歩向こうの純ドイツ人っぽい人に聞かないで私に聞くのよ。
自分でもなんだかおかしくなってしまって、一呼吸して言う。「すみません。私ドイツ語あんまり上手じゃないもんで、うまく言えなくて…。」
すると、おばちゃん。さっきよりは迫力が減ったものの、まだこちらに向かって進んでくる。「遅延なの?列車遅れてるの?」
「いやいや、遅延じゃないですよ。次の列車、1等席が省かれてます、って。だから、この辺にいれば2等来るんじゃないですかね」
私の言葉を聞いて、やっとおばちゃんがほっとした顔をする。
「あなた、ドイツ人に聞き取れないアナウンスを聞き取れてるんだから、十分ドイツ語できるんじゃないの」
あいやー。どうもありがとうございます。
このおばちゃん、この後列車が来る直前まで延々と話を続けた。どうやらその日に同窓会があったらしく、気分がよかったのかもしれない。
ところで、このホームのおばちゃんは十分なんて言ってくれたけど、これこそが私の問題なのだ。
相手の言ってることはわかるのに、自分から発話できない。
これは、学んでいる外国語を話す国に住んでいる外国語学習者が陥りやすい穴なんじゃないかとと思う。
文章の中のおおまかな単語と並びで、相手の言っていることはほとんどわかってしまう。でも、例えば前置詞、例えば後置詞なんかは全然聞き取っていないので、自分で発話するときにどの前置詞、後置詞を使えばいいのかよくわからない。 そして、適当に使うと意味が違う。
高校生の時に英語の学習で出てきたイディオムというのを覚えているだろうか。まさにあれだ。
「~の前に」と英語で言いたいときには「in front of」。ただの「front of」ではないのだ。このinがあるかないかで、ちゃんとした英語に聞こえるか聞こえないかに大きく差が出てくる。inがないと意味は分かるけど不自然なのだ。
要するに、私の発するドイツ語はきっと不自然なのだ。・・・自分ではよくわからないけれど。
そして、それを克服するには、イディオムをきちんと記憶する、という私の苦手を通り越した領域を制覇しなければならない・・・のだと思う。
曲りなりに、私が英語の母語話者の友達とわいわいやっていけ、何かおかしな言い回しをすると「今Yasが変なこと言ったー」などと笑われていられるのも、高校の英語文法の授業と、大学受験のための暗記が効をなしているのだ。
一方、大学受験ほど緊迫感のないこのドイツの生活で「イディオムを暗記する」というのはどんな技かはわからないが、その至難の技を超え、スーパートリプルA級を4回続けて見せるほどに私にとっては難しい。
理由があることを記憶しろと言われるならばそれほど難しくないのだけど、私は恣意的な事柄を記憶する能力に極端にかけている気がする。
もちろん人の名前を記憶するのも苦手だ。覚えなくちゃいけない人の名前は、昔々弟が試してみた超暗記法とかいったと思われる「何かに関連付けて記憶する」という方法に頼っている。
ま、そんな言い訳はいいとして。この目の前にある問題点。そして、その解決策を苦手とする私にとってできること・・・。やっぱり「こつこつ」ですかね。(この「~ですかね」という言い回し、以前「この人どうにもならないなぁ」なんて思ってしまった人がよく使う言い回しだったのでいつも使うのをためらうのだけど、ここではこれしか言いようがない・・・。)
高校の入学式で校長先生がまじめになのかウケ狙いなのか言った言葉。「勉強のコツはコツコツです」。その時にはばからしい、と鼻にもひっかけなかったけど、実際問題、そこが突き詰めた事実なのかもしれない。さすが校長。
コツコツ行きますか。コツコツと。