12月に1ヵ月フィリピンにいたというのに、また日本に帰る前にもフィリピンのボラカイ島に寄った。Wolle曰くバリからの帰り道にボラカイ島があるから。・・・そうだろうか。
とは言え、フィリピンに行くと決まった時から、ボラカイ島にはいくつもりだった私。9年前ダイブマスターコースを教えたCiscoが働いているから。かつてYaskoのしっぽと呼ばれていた彼も、もちろん今ではインストラクター。
フランスに籍をおくベネズエラ人のCiscoはスペイン語、フランス語、そして変な英語を自在に操り次々に店頭で旅行者を引き留め、そして逃げられている。ブロンドに目のない彼は、ブロンドの女の子には特にしつこく・・・もとい、念入りに説明をする。ビーチを歩いて20分しかかからない店からの帰り道に数時間かかるくらい友達が多く、そしてよくしゃべる。話すことがないと歌を歌う。その辺でかかっている音楽に合わせて踊りだす。いや、さすがラテン。腰を一ひねりしただけで音楽が彼の体にまとわりつくかのようだ。彼の隣でアジア人が一緒に踊ろうものなら、それがまるでエアロビクスの練習のように見えてしまう。そしてそれなのに、騒々しくない。
私が彼に会いたかった理由。3か月以上も毎日私の後ろをトレーニングのために泳ぎ続けた彼のガイドで一緒に潜りたかった理由。
3か月ほどのダイブマスターコースを終え、初めてCiscoが自分のお客さんを連れてガイドした日。ボート上のスタッフ同士でダイブサイトを決定した時、Ciscoはきょろりと聞いた。
「ねぇ、このサイトでサメはどこにいるの」
スタッフ一同沈黙。このダイブサイトはメインの見ものがサメの人気サイトだ。Ciscoだって少なくとも10本や20本は潜っているはず。
「お前何今頃いってんだよ」
「どうしてそんなこと知らないんだよ」
「いつも何見て泳いでたんだよ」
「誰だよ、こいつにサインしたの」・・・いたたたっ!
さんざんである。さらに誰も相手にしてくれない。
私は聞いてみた。ねぇ、どうしてサメのいる場所わからないの。今まで何本も潜っているでしょ、ここ。すると、予想もしなかった答えが返ってきた。
「僕はインストラクターに言われた通り生徒とインストラクターばかり見ていたんだ。だって、Yaskoもそう指示したでしょ?このサイトでサメを生徒に見せるときにはサメじゃなくて生徒の浮き沈みを常に見てろ、って。僕はこのサイトでまだサメを見たことがない」
ほほぅ。そうか。なるほど。その通りだ。私が指示したんだ、よそ見するな、って。そりゃ、Ciscoがサメのいる場所を知らないのは私の責任でもあるのか。 じゃぁ、教えてあげないとね。そうかそうか、そんなにまじめだったんだ、Cisco。
いつもへらへらとお気楽そうに見える彼の恐ろしくまじめな部分を見た気がする、これが一つ目の理由。
そしてもう一つ。
Ciscoがインストラクターになったばかりの頃。
その日私はビデオカメラを持って仕事をしていた。朝ダイバーが店を出発するところから帰ってくるところまでを陸、水中ともに撮影し、編集し、夕方お客さんに見てもらって買ってもらうという仕事だ。この仕事の時は、お客さんが私を追いかけるんじゃなくて、私がお客さんのグループを追いかけることになる。
Ciscoのグループの潜降を撮るために一足先に水底へ降りる。・・・と、 生徒さんが膝立ちで着底する予定の砂地にDevil Scorpionfish(サツマカサゴ)が擬態して座ってるではないか。このカサゴ、ひれに猛毒を持つ。刺されるとひどい痛みを伴う高熱が出る。
頭上を見ると、すでにCiscoは片手に一人ずつ生徒さんを掴んで潜降を開始している。慌ててサインを出す。ここにDevil Scorpionいるよ!
するとCiscoは目で頷いただけでそのまま潜降。そして、驚いたことに、今まで私たちインストラクターがみせたこともないポジションでスキルの練習を開始した。ダイバーが水中でとることはほとんどないポジション、水底に立ったまま着底。そう、陸にいるときのように立った姿勢でスキルの練習を始めたのだ。ちなみに、膝立ちの着底のほうが確実に安定するので、一般には膝立ちでスキルを行う。
てっきり隣の砂地に移動するかと思った。でも予定もしていないのに緊張している生徒さんを泳がせるのはかわいそうだし、大仕事だ。それを臨機応変にいともたやすくポジション変更だけで、慌てるほどの状況をクリアしてしまった。しかも説明してある予定の変更を生徒さんに自然に伝えて。そして、絶対にしてはいけないことのひとつ、インストラクターが慌てることなく。
この時、他の人がなんと言おうがCiscoがどれほどいいインストラクターなのか見た思いだった。そして彼から大いに学んだ。
私もそうだったように、ほかのインストラクターたちもCiscoのことを頑固だけどお気楽で面白くて元気な男、くらいに思っていたんじゃないだろうか。今でも思ってるかもしれない。あるいは私と同じように彼の意外な一面を見せてもらって、私のように思うようになったのだろうか。
Cisco大好き‼‼‼ って。
こんな彼がフィリピンで働いていて、フィリピンをうろつく私が立ち寄らないほうはない。
彼は私の好みのダイビングに合わせて、潮とダイブサイトを選んでくれた。私としてはほかの生徒さんと一緒にCiscoにくっついていくんでもよかったんだけど、どうしても二人で行きたかったようだ。
たった1本しか行けなかったけれど、彼が選んでくれたダイブは文句なしに私の好みだった。
流れなしの小物ダイブ。
このダイブ。もちろん水中も楽しかったけれど、ちょっと特別なダイブだった。最大深度(そのダイブで一番深かった深度 )12m弱。水温25度に2,5㎜のウェットスーツで84分。
インストラクター同士でダイブするとエアの消費をそれほど気にしないで済むのでたいていは深く行きたがる。それが体験ダイバーでも行く12m弱。
そして、25度の水温。この水温では一般的に最低5㎜のウェットスーツを着る。それが2.5㎜。
浅瀬でのダイブなので上級者ダイバーならエアの残量を気にせずいつまでもいられる。ということで84分も水中にいた。これは一般的なダイブの2倍くらいの長さだ。
透明度は15-20m。 リーフはいたって健康的。今日はCiscoも半分遊びのダイブなのでカメラを持っている。
そして私が普段よく潜る海域とは違うので、水中生物の種類も違うものが多い。
上の左の生物。ホヤの仲間だろうか。色がきれいに出ていない写真だけど、緑の濃淡がきれいだった。
そして右の生物。なんだろう。これは写真よりも映像のほうがよくわかるかもしれない。群生する習慣のナマコかな。
ずっとこんな風に動いてるんだろうか。それとも夜は違う姿をしてるのかな。
そして下の写真の青色の生物はホヤの仲間。そしてよく見ると、ホヤの上のほうに小さな白い粒がたくさん見える。これは実際にはもやもやと動いている。小さすぎるのでほとんどのダイバーには見えないし、気にもしないけれど、小さな小さな稚魚。健康的なリーフで潜っていると、実はよく見かける。小さすぎてなんの稚魚なのかわからないけれど、これがいるということは、近い将来何かの魚の群れが見られるということ。
84分も水中で私が夢中になっていたものの一つ。
エビ。
小さなものだと数㎜。住んでいる場所と特徴を知らないと、指をさして見せてもらってもなかなか見えないものもいる。そんな小さくてカラフルなエビたちがこのリーフにはそこら中にいた。
なるほど。これがCiscoがこのダイブサイトを選んだ理由だ、きっと。
下の写真。一見なんだかわからないという人がたくさんいると思う。
上の写真の中央を拡大すると、下の写真になる。
ただ、私のカメラはマクロに非常に弱いため、上の写真くらいしか撮れない。
しかもエビたちはサンゴの内側に隠れ、ちょこちょこと動くので、84分も水中にいたにもかかわらず、たったの数枚しかちゃんとした写真はない…。
これは私が写真を撮っているところをCiscoが撮ってくれた写真。
ダイブをしない人から見るととんでもないポジションに見えるかもしれないけれど、器材でリーフを傷つけずに生物を見るためにひっくり返ってるだけで、これは自分でコントロールしてます。 でも・・・もう少しましなポジションの写真でもよかったよ、Cisco・・・。
84分はあっという間だった。Ciscoは私にぴったりくっついているわけではなく、視界から消えない程度のところで自分も写真を撮っている。そして、私がきょろきょろしだすと、大体のコースをガイドしてくれる。
友達同士で潜ると、勝手に泳ぎながら面白いものを見つけると共有するというとても面白いダイブになる。この日ももちろんそんなダイブだった。
ガイドありがとう、Cisco。
とは言え、フィリピンに行くと決まった時から、ボラカイ島にはいくつもりだった私。9年前ダイブマスターコースを教えたCiscoが働いているから。かつてYaskoのしっぽと呼ばれていた彼も、もちろん今ではインストラクター。
フランスに籍をおくベネズエラ人のCiscoはスペイン語、フランス語、そして変な英語を自在に操り次々に店頭で旅行者を引き留め、そして逃げられている。ブロンドに目のない彼は、ブロンドの女の子には特にしつこく・・・もとい、念入りに説明をする。ビーチを歩いて20分しかかからない店からの帰り道に数時間かかるくらい友達が多く、そしてよくしゃべる。話すことがないと歌を歌う。その辺でかかっている音楽に合わせて踊りだす。いや、さすがラテン。腰を一ひねりしただけで音楽が彼の体にまとわりつくかのようだ。彼の隣でアジア人が一緒に踊ろうものなら、それがまるでエアロビクスの練習のように見えてしまう。そしてそれなのに、騒々しくない。
私が彼に会いたかった理由。3か月以上も毎日私の後ろをトレーニングのために泳ぎ続けた彼のガイドで一緒に潜りたかった理由。
3か月ほどのダイブマスターコースを終え、初めてCiscoが自分のお客さんを連れてガイドした日。ボート上のスタッフ同士でダイブサイトを決定した時、Ciscoはきょろりと聞いた。
「ねぇ、このサイトでサメはどこにいるの」
スタッフ一同沈黙。このダイブサイトはメインの見ものがサメの人気サイトだ。Ciscoだって少なくとも10本や20本は潜っているはず。
「お前何今頃いってんだよ」
「どうしてそんなこと知らないんだよ」
「いつも何見て泳いでたんだよ」
「誰だよ、こいつにサインしたの」・・・いたたたっ!
さんざんである。さらに誰も相手にしてくれない。
私は聞いてみた。ねぇ、どうしてサメのいる場所わからないの。今まで何本も潜っているでしょ、ここ。すると、予想もしなかった答えが返ってきた。
「僕はインストラクターに言われた通り生徒とインストラクターばかり見ていたんだ。だって、Yaskoもそう指示したでしょ?このサイトでサメを生徒に見せるときにはサメじゃなくて生徒の浮き沈みを常に見てろ、って。僕はこのサイトでまだサメを見たことがない」
ほほぅ。そうか。なるほど。その通りだ。私が指示したんだ、よそ見するな、って。そりゃ、Ciscoがサメのいる場所を知らないのは私の責任でもあるのか。 じゃぁ、教えてあげないとね。そうかそうか、そんなにまじめだったんだ、Cisco。
いつもへらへらとお気楽そうに見える彼の恐ろしくまじめな部分を見た気がする、これが一つ目の理由。
そしてもう一つ。
Ciscoがインストラクターになったばかりの頃。
その日私はビデオカメラを持って仕事をしていた。朝ダイバーが店を出発するところから帰ってくるところまでを陸、水中ともに撮影し、編集し、夕方お客さんに見てもらって買ってもらうという仕事だ。この仕事の時は、お客さんが私を追いかけるんじゃなくて、私がお客さんのグループを追いかけることになる。
Ciscoのグループの潜降を撮るために一足先に水底へ降りる。・・・と、 生徒さんが膝立ちで着底する予定の砂地にDevil Scorpionfish(サツマカサゴ)が擬態して座ってるではないか。このカサゴ、ひれに猛毒を持つ。刺されるとひどい痛みを伴う高熱が出る。
頭上を見ると、すでにCiscoは片手に一人ずつ生徒さんを掴んで潜降を開始している。慌ててサインを出す。ここにDevil Scorpionいるよ!
するとCiscoは目で頷いただけでそのまま潜降。そして、驚いたことに、今まで私たちインストラクターがみせたこともないポジションでスキルの練習を開始した。ダイバーが水中でとることはほとんどないポジション、水底に立ったまま着底。そう、陸にいるときのように立った姿勢でスキルの練習を始めたのだ。ちなみに、膝立ちの着底のほうが確実に安定するので、一般には膝立ちでスキルを行う。
てっきり隣の砂地に移動するかと思った。でも予定もしていないのに緊張している生徒さんを泳がせるのはかわいそうだし、大仕事だ。それを臨機応変にいともたやすくポジション変更だけで、慌てるほどの状況をクリアしてしまった。しかも説明してある予定の変更を生徒さんに自然に伝えて。そして、絶対にしてはいけないことのひとつ、インストラクターが慌てることなく。
この時、他の人がなんと言おうがCiscoがどれほどいいインストラクターなのか見た思いだった。そして彼から大いに学んだ。
私もそうだったように、ほかのインストラクターたちもCiscoのことを頑固だけどお気楽で面白くて元気な男、くらいに思っていたんじゃないだろうか。今でも思ってるかもしれない。あるいは私と同じように彼の意外な一面を見せてもらって、私のように思うようになったのだろうか。
Cisco大好き‼‼‼ って。
こんな彼がフィリピンで働いていて、フィリピンをうろつく私が立ち寄らないほうはない。
彼は私の好みのダイビングに合わせて、潮とダイブサイトを選んでくれた。私としてはほかの生徒さんと一緒にCiscoにくっついていくんでもよかったんだけど、どうしても二人で行きたかったようだ。
たった1本しか行けなかったけれど、彼が選んでくれたダイブは文句なしに私の好みだった。
流れなしの小物ダイブ。
このダイブ。もちろん水中も楽しかったけれど、ちょっと特別なダイブだった。最大深度(そのダイブで一番深かった深度 )12m弱。水温25度に2,5㎜のウェットスーツで84分。
インストラクター同士でダイブするとエアの消費をそれほど気にしないで済むのでたいていは深く行きたがる。それが体験ダイバーでも行く12m弱。
そして、25度の水温。この水温では一般的に最低5㎜のウェットスーツを着る。それが2.5㎜。
浅瀬でのダイブなので上級者ダイバーならエアの残量を気にせずいつまでもいられる。ということで84分も水中にいた。これは一般的なダイブの2倍くらいの長さだ。
透明度は15-20m。 リーフはいたって健康的。今日はCiscoも半分遊びのダイブなのでカメラを持っている。
上の左の生物。ホヤの仲間だろうか。色がきれいに出ていない写真だけど、緑の濃淡がきれいだった。
そして右の生物。なんだろう。これは写真よりも映像のほうがよくわかるかもしれない。群生する習慣のナマコかな。
ずっとこんな風に動いてるんだろうか。それとも夜は違う姿をしてるのかな。
そして下の写真の青色の生物はホヤの仲間。そしてよく見ると、ホヤの上のほうに小さな白い粒がたくさん見える。これは実際にはもやもやと動いている。小さすぎるのでほとんどのダイバーには見えないし、気にもしないけれど、小さな小さな稚魚。健康的なリーフで潜っていると、実はよく見かける。小さすぎてなんの稚魚なのかわからないけれど、これがいるということは、近い将来何かの魚の群れが見られるということ。
84分も水中で私が夢中になっていたものの一つ。
エビ。
小さなものだと数㎜。住んでいる場所と特徴を知らないと、指をさして見せてもらってもなかなか見えないものもいる。そんな小さくてカラフルなエビたちがこのリーフにはそこら中にいた。
なるほど。これがCiscoがこのダイブサイトを選んだ理由だ、きっと。
下の写真。一見なんだかわからないという人がたくさんいると思う。
上の写真の中央を拡大すると、下の写真になる。
ただ、私のカメラはマクロに非常に弱いため、上の写真くらいしか撮れない。
しかもエビたちはサンゴの内側に隠れ、ちょこちょこと動くので、84分も水中にいたにもかかわらず、たったの数枚しかちゃんとした写真はない…。
これは私が写真を撮っているところをCiscoが撮ってくれた写真。
ダイブをしない人から見るととんでもないポジションに見えるかもしれないけれど、器材でリーフを傷つけずに生物を見るためにひっくり返ってるだけで、これは自分でコントロールしてます。 でも・・・もう少しましなポジションの写真でもよかったよ、Cisco・・・。
84分はあっという間だった。Ciscoは私にぴったりくっついているわけではなく、視界から消えない程度のところで自分も写真を撮っている。そして、私がきょろきょろしだすと、大体のコースをガイドしてくれる。
友達同士で潜ると、勝手に泳ぎながら面白いものを見つけると共有するというとても面白いダイブになる。この日ももちろんそんなダイブだった。
ガイドありがとう、Cisco。
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