2011/10/05

小説 「のぼうの城」 和田竜

今回の階段文庫。いつもと比べて本の数も種類も多い。

和田竜という、聞いたことのない名前の文庫本が数冊あった。
「のぼうの城」
「忍びの国」
「小太郎の左腕」

「のぼうの城」という作品が最初の作品らしいが、129万部以上の売り上げ!・・・「小太郎の左腕」の帯に書いてあった・・・。これはすごい。
装丁は、文庫本なのにまるで単行本のような凝りよう。これは表紙で勝負がついたな、と思わせるに十分なインパクトのあるデザイン。そしてなぜか各ページの紙が異常に厚い。文庫本としては薄めの上下巻だけど、紙を一般の文庫本に使う用紙にしたら、1冊に収まるんじゃないかと思う。
だけど、それをあえて2巻に分けているところ、表紙のデザインに関係があるのかな。興味のある方は本屋さんで平積みで並んでいるところを見てほしい。

さて、本の装丁にここまで勝手なことを書いておいてなんだ、と言われそうだが、中身は「なるほど。これは129万部突破」と思わせるもの。
実際の歴史上の事実と多少のフィクションを交えてあるらしい。
舞台は現在の埼玉県。さきたま古墳群がある辺り。
実は私の母の実家がこの古墳群等からそれほど遠くないところにあり、地名なども多少身近な分面白く感じたのではないかとも思う。

登場人物は誰でも名前を知っているような人物から、実在人物にもかかわらず名前を聞いたこともない人までさまざま。
その登場人物一人ひとりのパーソナリティを、それぞれかっこよく設定してある。
戦国時代の人間の気風も風習も、戦国物を読んだことのない人にもわかりやすい書き方で説明してある。

どの人物をとっても、惚れ込んでしまいそうなほどかっこいい。これだけで十分なところを、あらすじも、実話だったとは思えないほどこれまたかっこいい。

この小説、映画化される予定だったのが、東日本大震災があったため延期されていた。
戦の攻め方が「水攻め」だ、と言う理由。たしかに津波に被災した人々がいる中で、それがいくら歴史上の事実であれ、映画であれ、水攻めはちょっと・・・。

史上に残る石田光成の負け戦。忍城(おしじょう)の水攻め。
戦国物をそれほど好まない私が「ちょっと他の戦国小説も読んでみようかな」なんて思ってしまった。

最初に挙げたほかの2冊。「のぼうの城」ほどのインパクトはない。が、もちろんそれなりに面白かった。

「忍びの国」は昔から小説には取り上げにくいテーマの忍者もの。
私にとって忍者とは、司馬遼太郎「梟の城」の重さまと忍者ハットリくんくらいしか知らないので、何の比較にもならないけど、古い書物などもたくさん参考文献として使用しているようで、細かいところが面白い。

3冊挙げておいて、2冊のことしか書かないのも気持ち悪いので、もう1冊「小太郎の左腕」についても触れておこうかな。
これは先の2冊と比べるとフィクション性がかなりあがっている作品・・・って、あとがきに書いてあった。
江戸時代を舞台にした町人などが主人公の小説を「江戸もの」と言うとしたら、これはまさに「戦国もの」なんじゃないかと思う。


この人の作品。どれをとっても主人公、あるいは脇役であっても、登場人物がかっこよすぎる。と、いうか、私の好みなだけかな。
強くて潔かったら、小説なんて顔は自由に想像してるわけだから、かっこよく見えて当たり前だ。
こういう小説が映画になったのは、見ない方がいいのかなぁ。
ちなみに「のぼうの城」。野村萬斎、佐藤浩市は私のキャスティングとはだ~いぶずれてます。

興味のある方は下記へ。
ウィキペディア「のぼうの城」

映画「のぼうの城」公式サイト



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