2014/02/05

23歳の失恋

ピピ島にいるとき、私の周りの友達の年齢は実にさまざま。
20代前半から60代まで。当然のごとく、みんな対等に話をする。

若い子達はもちろんダイバーが圧倒的に多い。
その中に、23歳の女の子で仲のいい子がいる。

おととい、彼女が通りをぼんやり歩いているのを見かけたので、はろーはろー、なんて声をかけた。いつになくリアクションがないので、どうしたの?って聞いてみると・・・・あれ、あれ・・・彼女の大きな愛くるしい目にみるみる涙が盛り上がる。


どうした、どうした。
まぁ、こういうとき、私は年齢のせいもあってか、比較的相談役になることが多い。


彼女はその日、それまで一緒に住んでいた彼の部屋を出たのだという。あんまりにも相手にしてくれないから、「Do you love me now?」って聞いてみたんだそうな。
そうしたら「わかんない」って答えられたらしく・・・。

彼のほうも私は仲がいい。ピピ島にいるインストラクターの中では古株同士だし、彼は・・・毎回、彼女は若いとは言え・・・30代後半。
かなり独特なタイプの人で、私にとっては軽い話から深い話までできる面白い人。
・・・だが。
彼女曰く、
優しい言葉をかけてくれることが少ない。
スウィートなことを言ってくれない。
自分がサッカーを見たいときだけ、勝手に出かけてしまう。
誘っても一緒に出かけてくれない。
いつも部屋でインターネットばかりしてる(彼はダイビングのウェブサイトの仕事をしてる)。
あれこれ、あれこれ・・・。


おや?
どこかの彼氏に似てますな・・・。
こういうのは別居の条件になるんでしょうか。
それはさておき。






あそこのバーにいるから、何もすることがなかったらおいで、と伝えると、1時間後くらいにやってきた。
さっきは涙が出ちゃってごめんね、なんて言いながら、またしても青い目が潤んでる。そして、私にくっついて、ちょっとちっちゃくなってる・・・・元々は私より、そしてその彼よりも大きいんだけど。
おそらく誰彼なしに話せることじゃないから、私のところに来たんだろう。


「私は23歳なのよ。こんなに年が離れてる若い彼女をどうしてかわいがってくれないんだろう。」
「彼と1年半も一緒にいるのよ。私のこの若い時間を無駄にしたくないよ。この年齢だっていうだけでも男の子よって来るんだから・・・。」


彼女の訴えは、なんとなく、わかるような、ちょっとクビを傾げたくなるような・・・。
確かに彼女は「かわいい」と「きれい」の調度真ん中くらいで、彼女が「もてる」ことも事実だし、自分自身でもそれはわかっていることなんだろう。
確かに彼女の前の彼は若くてかっこよかった。




が、彼女には申し訳ないんだが、訴えを聞いていて、思わず頬が緩んでしまった。
別れ話を聞いているというよりも、拗ねているのをなだめているような、わがままを聞いているような・・・。

もちろん何でもいいからスウィートなことを言ってくれたほうが気分もいいし、こちらも優しくもなれる。
この、日本人男性の持たない習慣に初めて接したころ、私はむしろ、どんな言葉を返せばいいのかわからなくて困ったものだ。
シャワーを浴び終わってみたら、「君はとってもクリーンだね。最高だよ」なんて言われたって、何を当たり前のことを・・・なんて思ったりして。I love youっていうからThank youって返したら怒られたこともあるし・・。


今となっては、そういう言葉がないと寂しくはあるけれど、別れ話の理由にはならないような・・・と、思うのは私が日本人だから。
スウィートでなくなる=もう愛してない
というのは、立派な別れの理由になる。


でもとにかく、彼女は現在ひどく傷ついていて、おとといも昨日の夜も私の隣から離れない。そんな彼女をすごくかわいいなぁ、と思う。そして、同時に、23歳という若さが微笑ましくも、羨ましくもある。


「じゃぁさー、あなたは彼のこと愛してるの?」
って、聞いてみた。すると彼女は、きょろんとした顔をしたあと、「わかんない」・・・だって。
大体このカップルは元々ベストフレンド同士で、それだから部屋をシェアして暮らしていた。それが何かの勢いでカップルになってしまったから、いつからI love youってお互いに言い出したのか、自分たちでもよくわかっていない様子。



去年一緒にいた仲間内からは「プリンセス」っていうニックネームをもらっていたくらい、多少わがままなところはあるけど、年齢の割りにしっかりしていて、人を気遣うこともできる彼女。
今年は彼女にとっては経験のないマネージメントのような仕事をしていて、その疲れも出てきて、普段のわがままに拍車がかかっている状態なんだと思う。こういうときに一番当たりやすいのはやっぱりボーイフレンドなのだ。


失恋に直面している彼女には申し訳ないけれど、こういうかわいらしい恋愛をしていたころが私にもあったんだよなぁ、なんて思ってしまう。
で、そんな恋愛と失恋を繰り返しているうちに、徐々に、かわいいだけの女の子から脱していくんだと思う。


昨日、彼女に言いたかったけど言えなかったこと。
今はまだ過程なんだよ、と。
今悲しいときには、思い切り悲しみに浸かるといい。時間という巨大なシステムがいつかこの辛い思いをスウィートな思い出に変えてくれる。
そして、そんな思い出がいくつもいくつも溜まったころ、スウィートなことを言ってくれなくても、その人と一緒にいるだけで自分がスウィートになれるような人が彼女の前にきっと出てくるはず。いや、そんな人を見分けることができるようになるはず。


こんなことを今の彼女に言ったって慰めにもならないし、説教くさいようでなんとなく言えなかったけど。




私が23歳だったころ、私のボーイフレンドたちは一度でもスウィートなことを言ってくれたことがあっただろうか、などとおぼつかない記憶をたどりつつ、おそらく今晩も私は彼女と並んでバーの隅っこでダイキリを啜ってるんだろうな、なんて思っている。
あるいは、彼ら、今日のうちに仲直りをして元のさやに収まっているかもしれない。ちょっと気にかかって、久しぶりに書くブログに彼女のことを書いてみたけれど、もしかしたらただの老婆心・・・。



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