ドミトリーに、すでに1週間以上、そして全部で22泊するというおじさんがいる。
アメリカ人。名前は知らない。
はじめに私が到着したときに、電気のスイッチを一緒に探してくれたおじさんだ。
私が早い夕食を済ませてドミに戻ると、おじさんがドミのド真ん中でヘッドフォンをして大の字になっていた。
Helloって言ってみたけど、聞こえないよね。ヘッドフォンしてるんだから。
私は、今古本屋でゴリオシで借りてきた本を読み始める。明日中に返すって約束したから。
少しするとおじさんがバルコニーに出てきた。
「Do you speak good English??」
は??なんじゃい、その質問は。
あなたにとってGoodかどうかわかんないけど、普通に話すよ。っていうと、とたんにすごい勢いで話し始めた。
どうやら話し相手がほしかったらしい。
どうも少しにおうなーと思っていたんだけど、やっぱりそうだった。
このおじさんベジタリアンで、インド、ヨガ系かぶれというか、そういう人だ。
こんな風にくくってしまうと語弊があると思うんだけど、欧米人で長くバックパッカーをしていると、そういうものにはまってしまう人が結構いるみたい。
前回ペナンに来たときにも、この同じドミでオーストラリア人のそういうおじさんに捕まった。
そんなに悪い人たちではない。
若い子達みたいに飲んで騒いでうるさくもしないし、下心があるわけではないし。
ただ。
本当にただ、ただ話がしたいのだ。
それはよくわかる。
でもたいてい、その話が長ーーいんだよね、これが。
そして自分の追いかけているものがどれほどすばらしいかを延々話してくれる。
私はそんなに暇そうに見えるんだろうか。
それとも私が時々質問なんかをはさむからだろうか。
私、それほど聞き上手じゃないと思うんだけどなぁ。
おじさんは今Ammaという女性にはまっている。私は知らなかったのだが、世界的に有名な人らしい。
世界にはSpecial Masterといわれる人たちが64人いるらしい。彼らは何でもわかっているという。どうもなんか輪廻転生とかそういう話っぽい。何か宗教かなんかのレベルがとても高い人たちで、何度も生まれ変わったりしないと、その地位までいけないとか何とか、、、。
Amma女史もその一人だ。
他には誰がそういう人なの?
おじさんは数え始める。
先年亡くなったポープ、、、日本語でなんていうんだっけか。故レーガン大統領。Amma。
そしてマレーシアにAya・・・とか何とかいう人。(名前忘れました。ごめんなさい)
ひとりはシリアのどこか。もうひとり、インドのヒマラヤ地域に。
そして、マイケル・ジャクソン。
マイケル・ジャクソン?????
思わず噴出しそうになるのをこらえる。
だっておじさん、大マジメな顔してるから。
でも、マイケル・ジャクソンって、、、。
ひとりとんでもない名前が出てきただけで、おじさんが本気なのかそうじゃないのかわからなくなる。
おじさんはタイの王様もそのひとりではないかと疑っているらしい。
サイババは直接尋ねにいって、違ったそうだ。
Amma女史の話をたくさんしてくれる。来月彼女がLAに行くので、おじさんも地元のLAに帰らなければいけない。
こういう話は確かに私にとって珍しい話で、興味深い部分もある。
でもたいていは最後、イミフメイになって終わる。
だって、彼らの見ている世界は、私の見ている世界とあまりに違うから。
以前、ボーイフレンドに火星人がいた。
「僕は火星から、地球を救いに来たんだ。」
って言うから、
「私はヴィーナスから地球にホリデーに来たの。」
って言ったら、あんまりにも悲しそうな目をするので信じてあげることにした。
でも彼は当時まだ、地球を救う方法がみつからず悩んでいた。
彼も陰陽とかメディテーションとかに詳しく、たいていは私にとってチンプンカンプンだった。
私が理解しない(できない)ことをことのほか憂い、私ががんばってようやく小さな話に「なるほど」とうなずくと輝くような笑顔を見せる。
私が赤色を陽だと覚えたのに、ジャガイモが陰か陽かどっちかわからなくなることが、彼にとっては理解しがたかったようだ。
私だって、
「じゃあ、カメラはどっちなんだー!!」
って聞き返したかったけど、議論をしても何の役にも立たないとこは何度も経験済みだったので無駄なことはしないでいた。
彼らは私と同じ世界にいながら、まったく違う世界を見、生きている気がする。
話を聞いてくれる人がいると懸命に彼らの世界で見えるものの話をしてくれる。
ただ、あんまりにも唐突にそういう話を始めるので、たいていの人は敬遠するだろう。
最初にこう言ってくれればいいのだ。
「僕は君と同じだけど、違う世界を生きてる。その話をしよう。」
って。
そうしたら少なくとも少しは耳を傾ける人も増えるんじゃないだろうか。
今回と前回とこのドミで出会ったおじさんたちと、私のボーイフレンドだった火星人にも共通して言えることがある。
それは自然が減っていくこと、地球が汚染されていくことをとてもとても悲しんでいる。そして自分も含めて、愛する人がそれによって傷つくことをとても恐れている。
そして不思議と、自分の世界についてたくさん話をしてくれるけど、決してそれを、例えばベジタリアンになることを強要しない。
私は個人的に、
「私、ベジタリアンなの。だからとてもヘルシーよ。」
みたいな事を言いながら、インスタントラーメンを食べ、
「あなたもベジタリアンになるべきよ。肉なんて汚らわしい。」
と、私がバーガーをプクつく前で言うような人があまり好きではない。
もしかしたら、だからこういうキミョーなおじさんたちが嫌いじゃないのかもしれない。
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