ここのところ母と劇場へ出かけることが重なってます。
先日に引き続き、今日は「わが母の記」
もちろん前もって井上靖の「わが母の記」は読みました。薄目の本で読みやすかったし・・・。
私にとって井上靖は少し特別な人・・・って、もちろん知り合いなわけじゃないけど・・・。
日本文学に漬かり込むきっかけになったのが、実はこの人。
初めて読んだのは「敦煌」。次からはもう、読める限りの濫読だった気がする。ただなぜか、そのころ「氷壁」だけはどうしても読みきれなかった。年齢のせいかな。今となっては「氷壁」は私の中ではものすごく高い位置に評価があるんだけど。
と、とにかく。
「わが母の記」。
井上靖といえばどうしてもおぬいばあさんがでてくる。それが今度は「母」。
本には、年齢を重ねていく母を、老耄の激しくなる母を、近くで、あるいは時には少しはなれたところから、見つめる作者の思いがつづられている。
私にとってこの人以上に、美しく端的な言葉を使って物事を表現できる人は少ない。そこには媚も、過度な装飾もない。
そんな言葉を連ねて「わが母」を浮かび上がらせているこの本は、老いた母を子供の愛情で包み込んだような作品だ。
さて、映画のほうは。
一言で言うと、とても美しい映画だった。
風景しかり、演技しかり。そしてもちろん内容しかり。
音楽もバッハなども使ってあるところが、明治でも平成でもない「美しい昭和」の雰囲気をうまく出していたように思う。
樹木希林が若いころの母から亡くなるまでをうま~く演じている。
老いていく母の弱り具合、耄碌具合も絶妙。
役所広司との掛け合いも、間といい、口調といい面白さもやさしさもちょうどいい具合に混ぜ合わされている。
後半、本の「わが母の記」とは少し内容が違っていた。
これは監督が、自ら井上靖について調べて内容を補足、変更したんだろうか。
本を読むのが先でも、映画を見るのが先でも、どちらも楽しむことの出来る作品だと思う。
井上靖
映画「わが母の記」
樹木希林
役所広司
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