2014/07/16

Luxembourg(ルクセンブルグ) ~共通言語~

今回の旅行にルクセンブルグを選んだ理由はいくつかある。

ひとつ。まだ行ったことがない国であること。
ひとつ。Wolleがそれほど興味を持っていないこと。・・・つまり彼と一緒だと、きっと選ばない。
ひとつ。英語が通じやすいところであること。
ひとつ。2泊で、しかも予算が限られていること。
ひとつ。うちから電車で簡単にいけちゃうところ。

と、まぁ、本当にいくつもある。
ベルギーなんかも考えてみたんだけど、2泊でベルギーのいいところが見られるとは思えない。ルクセンブルグなら、メインの「市内」が2泊で回れるんじゃないか、と。

ドイツに来てから3週間。久しぶりのドイツ語に耳がちょっとは慣れてきたけれど、この時期はまだまだドイツ語で生活したりパーティをしたりすることに疲れる時期。
そこで、ドイツ語を聞かないで住むところ、というのが条件に入っていた。


さて、ルクセンブルグに到着したのは 夜8時。
ホテルも予約してないし、地図も持っていない。
まずは駅で地図を手に入れて、今晩寝る部屋を探す。

1時間ほどで部屋は見つかり、早速出かける。
なんといってもこの日はワールドカップのドイツ・ブラジル戦が10時から始まる。
私の見つけた部屋にはテレビがないので、どこかバーにでも出かけなければ見られない。

ホテルと違ってバーを探すのに1時間かかるとは思えないけれど、早く行かなくちゃ。

駅周辺の通りをうろうろしていると、もちろんいくつかバーやカフェはある。クラブなんかもある。
知らないところで入るんだから、一応外から見てうるさくなさそうなところがいい。

すると、あった、あった。
ホテルから5分ほど歩いたところに、昼間はカフェとしてオープンしていそうなバー。
しかも、入り口の看板にも、中にもサッカーのユニフォームがかかってる。しかも中は静かだぞ。

ワールドカップこそしっかり見ているものの、もともとはそれほどサッカーの大ファンではない。Wolleが見てるから一緒に見ている、という程度のもの。
だから、大勢のサッカーファンが押し合いへ試合しているようなバーはできたら避けたかった。

中に入って、聞いてみる。
「サッカー、テレビで見れる?」
バーのカウンター内にいたお姉さんは、ちょっと不思議そうな顔をしている。
もう一度聞いてみる。
「Football?」

すると、お姉さん
「Oui!」

何?英語で聞いてるのに、不思議そうな顔をしてフランス語で返してくるとは・・・もしかして、ここは英語はだめ?
次に「Small beer」と頼むと、2回聞き返した後にやっとわかった様子。

あぁ、ドイツ語から逃げてきたら、今度はフランス語だ。
あれ、そういえば私、昔フランス語はなしてなかったっけ?

いやいや、そんなのはもう、遠い昔の話。
しかも、フランス語を話すことが定着する前に話すことをやめたので、今となっては片言すら出てこない。
ここで、「お、フランス語久しぶりじゃ~ん。」なんて思って、すらすらと口から出てくれば、泣きながら勉強した甲斐もあるというものだけれど、私の脳みそはそんなそぶりすら見せない。

カウンターの後ろの、しかも向こうのほうで、お姉さんが常連さんらしきお兄さんに「あなた英語はなす?」みたいなことを聞いているのが聞こえる。「ちょっとはね」と、お兄さん。
あぁ、簡単なことなら聞いて理解はまだできるんだ、なんて、ちょっとうれしくなってしまうところがなんとも情けない。

なんて、つまらないことを思いながら、ドイツ語で放映されているテレビを見ていると、おなかの大きなおじさんが二人・・・ひとりはドイツのナショナルチームのユニフォームを着てる・・・どかどかとバーに入ってきた。
おじさんたち、元気よく、「モゥイェン!!」

あぁ・・・ドイツ語方言か、ルクセンブルグ語か・・・。
ちょっと苦笑いだ。


さて、試合が始まる。
私は入り口近くのテレビで見ていたんだけど、どうやら奥に大きなテレビがある様子。
自分のビールを持って、さっき、ちょっと英語を話すと言っていたお兄さんに聞いてみる。
「奥のテレビのほうが大きいの?」
これも3回繰り返すまで「Yes」という言葉は返ってこなかったけど、せっかく見るなら大きなテレビのほうがいい。
奥に入っていくとお客さんはたったの二人。さっき、どやどやと入ってきたおじさん二人だ。

「ここ、空いてる?」
って、ドイツ語で聞いてみると、大きな声のドイツ語で、空いてるからすわれ、とのこと。

さて、おじさん二人と並ぶ。
すると、さっきのお兄さんもテレビの前に。そして、さっきまで入り口近くで私の脇に座っていたおじいちゃんもやってくる。そして、カウンターの中のお姉さんも・・・。
総勢6人。

気がつけば、全員ドイツ語を話しているではないか。

なんということ。
公用語がフランス語のルクセンブルグで、バーに集まった6人がドイツ語で話をしてるとは・・・。
確かにこの国はドイツの隣国だ。
でもね、私、ドイツ語から逃げようとしてこの国に来たんだけど・・・。
英語が通じやすいって、どこの情報ですか!!??

この日の試合。結局ドイツがブラジルに7対1というすばらしい数字で勝ち。
6人で踊るほど盛り上がったのは言うまでもない。
ビールとショットのおごりあい。そして、最後には「今度の日曜日の決勝の試合もここに来るから、君も絶対にくるんだ!」と、なんとうれしいお言葉・・・。来れないけど。



ハーフタイムのときに、サッカー以外の話をした。
ここで何してるんだ。観光か。何日ルクセンブルグにいるんだ。などなど。
結局翌日の観光情報はすべてここで仕入れた。
「明日も雨だからね、2階建ての観光バスがあるから、それに乗って一度一通り回ってみるといいよ」「チケットはね、どこどこで買えるよ」・・・等々。

6人全員で話をしているときにはドイツ語。
お兄さんとお姉さんで話をしているのはフランス語。
おじいちゃんと話すときには私以外の4人はルクセンブルグ語・・・だと思う。

誰も英語なんて話してない・・・。

共通の言語を持つということは大事なことなんだなぁ、と思う。
お兄さん曰く、イタリア語もポルトガル語も話す人がたくさんいるという。これは大々的な移民時期があったから。
確かに、私の泊まっているホテルのオーナーはイタリア語だった。がんばってフランス語を話してた感じで、英語はほとんどわかっていないようだった・・・。

なんてこった。
こんなに小さなひとつの国で、こんなにたくさんの言語が同時に使われているなんて。
島国日本と比べるとなんという違い。



この日に思ったこと。
言語っていうのは、自分が話すものが決まっているんじゃなくて、話をする相手やグループによって使い分けるものなんじゃないか、と。
ああ、私の彼がルクセンブルグ人じゃなくドイツ人でよかった、と思ったのは言うまでもない・・・。

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