2009/07/15

アンドレアスの情熱 ~Sailing Trip Denmarkの海~

アンドレアスはセーリングが大好きだ、っていうことにボートに乗ってやっと気がついた。

今までセーリングの話を一緒にしたことないし、去年フィッシングトーナメントに参加してたから釣りは好きなのかなぁ、って思ってたけど。しかもアンドレアスはヨーロッパの伝統的なブループリント・・・日本の藍染と同じものかな、デザインは違うけど・・・を創る人なので、二人で会話になるとたいていそのブループリントの話をしていることが多かった。

今回のトリップの前半。
雨が降って冷たい風が吹いてるのに、レネとアンドレアスはふたりずっと外にいた。
ボートに乗っている間、笑っている顔なんてほとんど見なかった。

パブで話をしてるときかなぁ。
私は初めてのこととか、気になったことなんかに出会うとクエスチョンモンスターに変身してしまうんだけど、このときも、何をきっかけにか変身してしまった。
いつからセーリング始めたの?
どこで習ったの?
どうしてセーリングなの?

そうしたら、急にアンドレアスが語りだした。

彼はWolleと同じ、旧東ドイツの出身。
旧東ドイツと聞いて何を想像するかは人それぞれだろうけど、私は少なくともWolleと一緒にいるようになってから初めて細かい話を聞くようになった。


当時、若い人たちにとって「国から出てはいけない」というルールはとても過酷だったようだ。外を見られない、見たい。見られない、見たい。見られない。
そんなときに壁が崩された。
それは、Wolleやアンドレアスの世代の人にとっては遅すぎることはなく、むしろ、話を聞くといいタイミングだったようにも聞こえる。

その壁が崩れる前。
アンドレアスは他の若者とたがわず、自分の国以外のどこかへ行くことを夢見ていたという。そして、その夢は漠然と「海」というものに向かった。
海を越えたら世界が広がるような、そんな気がしたのかもしれない。

壁の崩壊後、すぐに国外へ出ようとしたところ、政府に止められた。軍に入隊しなければいけないという指令に、どうしても従えず、それでも国外へ出ようとしたアンドレアスを政府か、警察かが捕まえた。
檻の中、だ。

アンドレアスが語ってくれたのは本当に大まかな話で、細かい経緯はわからない。
だけど、私が生きてきた世界とは明らかに違っていたことは確か。私は新しいところへ行くのが好きだし、常に何か新しいことを求めてうろうろしてるけど、アンドレアスが持つような情熱はない。
私の場合はむしろ、与えられすぎる世界から原始的な方向に向かって進んでいるような気がする。現実世界から離れようとしているというか・・・。

そんな経緯がアンドレアスの情熱に拍車をかけたことは確かだろう。
海へ。海へ。
そんなに夢見た海を渡ることができるセーリングはアンドレアスにとってものすごく大切なものなんだろうと思う。

ものすごく粗野な部分と繊細な部分を併せ持つアンドレアスの情熱は、壁のなくなって長いこと経つ今でも変わらない。
そんな気持ちをアンドレアスは「Passion」って呼んだ。

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