階段文庫から、私の知らない作家さんの本を発見。
文庫本の帯に書いてある文句。
「おすすめ文庫王国」
国内ミステリー部門 ダントツの第1位!
この20年で最高の傑作!
仕掛けと感動の珠玉短編を堪能せよ
さらに帯のうらには、
一切のムダを排して滋味に富み、研
ぎ澄まされた短編ミステリの凄みが
存分に味わえる、これぞ本屋の店員が
「百万部売っても売り足りない!」
と叫びたくなるほどの珠玉の一冊だ!
迫力のある文句。
これだけ書かれていれば、期待は大きく膨らむ。
でも、残念なことに、これは言い過ぎ。
この帯がなかったら、この短編小説がそこそこ楽しめたと思う。
でも、これだけ書いてあって、この内容では、ぶっちゃけていってしまうと作者がかわいそう。
こんな期待を背負わされたら、どんな作品でも色があせてしまう。
この出版社は、この作家のこの本だけが売れればいいんだろうか。
せっかくそれほど悪くはない短編を書いているのに、このずらりと並んだ殺し文句のような言葉の羅列に、中身がどうしても薄れてしまう。
短編でミステリを書くのはそれほど簡単なことではないと思う。
この中に収録されている短編も、ミステリ一辺倒ではなく、心理系と名をつけたほうがよさそうなものもある。
刑事が出てきて、事件が起こったからといって、それが一概にミステリであるとは限らない。
もう一度言おう。
4篇の短編、どれも悪くない。
ただ、この帯がこの本を殺してしまっている。
作家と出版社がどう協議したのかわからない。でも、せっかくの作品が出版社の目論見で価値を下げてしまっていることがなんだかむなしい。
売り上げを取るか。
作品の質を取るのか。
書籍が売れなくなってきている昨今、売り上げ部数を狙うのはもっとも。
でも、今でもまだ書籍を買い続けている私の家族のような人々にとって、この帯は作家の生み出す作品の価値を下げる以外の何物でもないような気がする。
興味のある方、参考までに。
「傍聞き」 長岡弘樹
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