2013/09/26

大人の子供の絵本 ~Der kleine Angsthase~

この前の誕生日にもらったものの中に、ドイツ語の絵本がある。
そのうちの一冊。

Der kleine Angsthase (デア・クライネ・アンクストハーゼ)



日本語に訳したら「ちいさな怖がりウサギ」、あるいは「怖がりちびウサギ」とでもなろうか。・・・私は訳すのがとても下手なので、単語そのままだけど。

私のとてもつたない語彙でも、どうにかこうにか読むことができる・・・時々辞書が必要だったけど・・・。


絵本の内容は当然子供でも理解できるような単純なもの。

ちいさなウサギくんが怖がりのおばあちゃんと一緒に住んでいる。おばあちゃんが何でもかんでも気をつけなさい、と言うものだから、ちいさなウサギくんは何でもかんでも怖がるようになってしまった。
お友達も彼のことを笑って一緒に遊んでくれないので、もっとちいさな赤ちゃんウサギUlliと遊んでいた。
あるとき悪いキツネが村にやってくる。
みんな逃げてしまったけれど、赤ちゃんウサギのUlliは、逃げ足が遅くて狐に捕まってしまう。
そこで、ちいさな怖がりのウサギくんはUlliを助けるために、狐のしっぽにつかまってUlliを助ける。結局キツネはちいさなウサギ君のせいで大きなこぶを作り、村から逃げていく。
村のウサギは喜んで、ちいさなウサギくんの勇気を表彰する。
おばあちゃんが彼に「怖いことになると思わなかったのか」と聞くと、彼は答える。「ちいさなUlliのことだけを考えたんだよ」と。


こういう絵本から「何を言いたいのでしょう」と、現代文の授業のようなつまらないことは考えない。
そんなことをいちいち言葉にしなければわからないようなら、物語を読まずに実用書でも読んでいればいい。
物語のよさは、人によって受け取り方が違うこと、そして、それがどれも間違っていないこと。


実は私は絵本が大好き。
どの絵本も「コレコレが大切なことですよ」、「コンナコトがいいことですよ」なんていう風には書いてない。
生きていくうえで大切にしなければいけないこと。ひとつひとつ言葉にする必要はないけれど、大人にとって、とても難しい「人として大切なこと」が物語として描かれている。

きっと、余分な色がまだ乗っていないキャンパスのような子供の心には、その「大切なこと」が最初の色になっていくんだと思う。
その色は目に見えない色かもしれないけれど、その色を最初に塗っておかなければ、後からどんな色を混ぜて乗せたところで発色しないような。


このDer kleine Angsthaseもそんな絵本。


そして、やっぱり絵本だから文の合間合間に入っている「絵」も大事。


この、お友達に遊んでもらえなくて、一人ぼっちで泣いている怖がりウサギ。
こんなに単純な絵なのに、見ているだけで悲しくなってしまう。


そして、こんなに悪い顔をしているキツネ。
自分よりもちいさなUlliがキツネに捕まってしまって驚いている怖がりウサギ。


ページのあっちこっちに挿絵が入り、どれくらい怖がりウサギが悪いキツネと格闘したのか・・・目が回りそうだ。


そして、これは最後のページ。


このウサギたち。
それほどかわいらしく描かれているわけではない。足だってみんながに股だし、どのウサギもみんな灰色だし。白も黒もいて、まぁるく座っている本物のウサギのほうがよっぽどかわいらしい。
それなのに、表情が豊かで、ついついじっくりと眺めてしまう。

それに、ほら、表紙裏・・・って言うのかな、表紙をめくったところの絵もこんなにかわいらしい。
そうよね、ウサギには人参です。


この絵本。私のお気に入りの絵本のひとつになりそう。

 

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